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北陸文化

【美術】難病も自分の個性 きょうも絵筆 鈴木治男さん 秋に回顧展予定

パーキンソン病を発症後も絵筆をとり続ける鈴木治男さん=石川県小松市の自宅アトリエで

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パーキンソン病 技法変え精力的に

 抽象画を追求してきた石川県小松市の画家鈴木治男さん(本名・中山治男)は、体のこわばりや手足にしびれや震えの出る難病パーキンソン病を患いながら、今も絵筆をとり続けている。技法を変えながらも「病気は自分の中に加わったもう一つの個性」と言い切る。今年秋には、県立美術館で画業を集大成する回顧展も予定。病気を超えて「絵画とは何かを問い続ける」。 (松岡等)

 鈴木さんは茨城県古河市生まれ。高校卒業後に一度は就職したが、二十二歳で金沢美術工芸大に入学し、一九七〇年代後半から抽象画を描き続けてきた。

 もともと「群像」をテーマにしてきたが一九八〇年代から「具象へのこだわりが消えて、画面構成そのものがテーマになっていった」。八一年のメキシコでの研修では「強烈な物の存在感と物質感に触れ、マチエール(絵肌)を見直した。

 抽象とはいえ、鈴木さんの作品は具体的なモチーフから描かれる。作品のタイトルには文学から触発された言葉も多い。現在の小松市郊外にアトリエを移してからは、窓から見える林とそこに生きる鳥や小動物たちを感じながら、四季折々の風景をモチーフに「共生の森から」のシリーズ、東日本大震災以降は「水の記憶」と題したシリーズも。

 病気を発症したのは二〇一三年。当時は金城大学短期大学部で学長も務めていたが、「書類にサインをするのもままならなかった。まともに描くことはできないのではと思った」。しかし「病気になる前と同じように描くのは難しい。ではどうしたらいいか。こっちがだめなら、こっちがあるじゃないか」と切り替える。利き手の右だけでなく、左手も使う。

鈴木治夫さんの作品「復元」(162センチ四方、綿布に墨と油彩、2016年)

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 布地が油絵の具の油を吸収するようにつくられたカンバスを用いるアブソルバンの手法に変え、水彩も併用。「技術的なこととは別に、例えば子どもや障害のある人の絵にも、プロの画家から見ても魅力あるものがある。上手でなくとも魅力的であればいい」。描き方は変わったが「イメージをどんどん構わず描いていく」。

 制作の一方、一九七〇年代からの自らの作品のほとんどを画像にし、インターネット上のフォトブックサービスを活用した小さな画集に言葉とともにまとめている。全国パーキンソン病友の会石川県支部(和みの会)では昨年四月から月一回の絵画教室を始めた。十人ほどが参加するが「自分の中に水脈を見つけた人もいる」とうれしそうだ。

 毎日、午前五時には起き、日記を書くことから一日が始まる。妻の中山美恵さん(68)も画家。「もう好きな本でも読んでゆっくりしてればいいのにと思うのにやめてくれない」と苦笑するが、鈴木さんが絵筆を止める気配はない。

 

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