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北陸文化

【アート】「霧の彫刻家」の足跡 中谷芙二子さん個展 水戸芸術館

(上)屋内での霧による新作《崩壊》。霧の中をカラスが舞う様子が浮かび上がる(下)屋外の作品=水戸市の水戸芸術館で

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 人工的に霧を発生させる「霧の芸術」で知られる中谷芙二子さんの国内で初めてとなる大規模個展「霧の抵抗 中谷芙二子」が水戸市の水戸芸術館で開かれている。屋内、屋外で霧を発生させる新作に加え、1970年代以降、社会への問いかけを含むビデオ作品の制作やギャラリーの創設などさまざまな芸術活動を展開してきた中谷さんの足跡をたどる。 (松岡等)

 中谷さんは、世界で初めて雪の結晶を作ったことで知られる石川県加賀市出身の物理学者・中谷宇吉郎の次女で、一九三三年、札幌市生まれ。米ノースウエスタン大美術学科を卒業後、初期の絵画制作を経て、芸術と技術の協働を目指す実験グループ「E.A.T.」に参加。活動の一環で七〇年の大阪万博ペプシ館で、初めて人工霧による「霧の彫刻」を発表した。

中谷芙二子さん(Photo:(C)LauraMiglone)

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 その後も霧の彫刻家として世界八十以上の場所で霧の作品を制作。石川県加賀市の「中谷宇吉郎雪の科学館」にも常設展示されている。二〇一七年には、現代美術を先導するロンドンのテート・モダン新館など七つの霧の新作を手掛けた。今回の展示では、過去の作品も六面の大スクリーンによる映像で紹介する。

 一方で中谷さんは、テレビなどのマスメディアが全盛を迎えた一九七〇年代、当時、普及し始めたばかりのビデオカメラを使い、水俣病や「老人の知恵をコンピュータでデータベース化する」といったテーマで、アーティストと協働した作品を制作。展示資料から、中谷さんの活動が、スマートフォンで個人が画像や動画を発信する現在のメディア環境の先駆けにも見えてくる。

《ペプシ館》 霧の彫刻,#47773,1970(参考図版)日本万国博覧会(EXPO’70)会場風景より 撮影:中谷芙二子

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 七一年には、世界四都市を当時としては最新の通信技術だったテレックス通信で結び、「ユートピアQ&A 1981」として、詩人や科学者、漫画家らが自由に質問と返答で応答しあうという、双方向のコミュニケーション実験も行った。展示されたその一部の言葉は、現代に生きる私たちにとっても切実な問題を含んでいる。

 会場に掲げられた「いま、切実に問われているのは、人間と自然との間の信頼関係ではないかと思う」という言葉は、九六年に中谷さんが発表した「応答する風景 霧の彫刻」と題されたテキストから。アートとテクノロジー、自然とメディアといった現代の問題を先取りして表現してきた。

 展示タイトルの「抵抗」という言葉には、中谷さんが社会へ働き掛けた活動と当時の時代精神を紹介することが、今の日本社会への刺激になるのではないかという意思が込められているかのようだ。

《水俣病を告発する会−テント村ビデオ日記》1971−1972ビデオより抜粋

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 会期は来年一月二十日まで。屋外、屋内で霧が発生する作品が見られる時間については同美術館のホームページで。

 

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