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北陸文化

知の種 呼び起こせ 河口龍夫さん個展 黒部市美術館

800冊の本とハスの種、銅線をつかった作品「ちのこうや」=富山県の黒部市美術館で

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 日本を代表する現代美術作家の一人で、金沢美術工芸大大学院教授も務める河口龍夫さんの個展「河口龍夫−ちのこうや−」が富山県黒部市の同市美術館で開かれている。「知の荒野」のシリーズから生まれた新たなインスタレーション作品のほか、同市近郊のフィールドワークを経て制作された作品群は、時間を超えてある「知」についての問いかけのようにも見える。(松岡等)

 一九六〇年代から日本の現代美術の第一線で活躍し、「前衛芸術の日本」展(八六年、仏ポンピドー・センター)、「大地の魔術師たち」展(八九年、同)など世界的な活躍で知られる。「物」「関係」への関心をテーマにし、土地の特性を生かすサイト・スペシフィックな作品も多い。昨年は奥能登国際芸術祭にも出品した。

 展示の中心になったインスタレーション作品は、白い紙で覆った本八百冊がランダムに並び、一冊、一冊からは銅の細い管が茎のように伸びて、先端にハスの種が付けられている。二〇一五年にドローイングで構想されていた作品。

1億9千万年前の化石、銅パイプ、ハスの種子、蜜蝋などによる作品「関係−化石からの再生」(撮影・斎藤さだむ)

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 黒部周辺で採集されたカメや植物の化石を素材にしたり、河口さんの過去の作品展の図録などを過去を封印する意味合いを持つ水(黒部扇状地の湧水)や蜜蝋(みつろう)で封じ込めた作品からは、時間を超えてある知、土地に埋もれた知を呼び起こしているかのようだ。

 学芸員の尺戸智佳子さんは「タイトルの『ち』とは、『知』であり、『地』でもある。あるいは『血』かもしれない」と話す。

 インターネットによって情報に覆い尽くされる一方、反知性主義やフェイクニュースが台頭する世界は、「知」のディストピアだが、それが「知の荒野」であるとして、知を象徴する本や現在につながる遠い過去の記憶である化石が、いつか芽吹くはずの種と接続されていることに、知への希望を見いだすのは楽観すぎるだろうか。

 十二月十六日まで。

 

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