日食はなぜ珍しいか

12月26日に東南アジアで金環食

2019年12月26日と20年6月21日、東南アジアで金環食があり、日本でも太陽の一部が欠ける部分日食になる。国内ではその後、2030年まで大きな日食を体験できない。地球から見上げる月は、毎月のように太陽を追い越すのに、日食はどうして珍しいのだろうか?

12月26日の金環食

12月26日の金環食は、12時40分(日本時間)ごろ中東で始まり、スリランカやシンガポールを通過し、16時前に米領グアム周辺で終わる。金環食になる地域はわずか118キロ幅の帯にすぎない。日本では、15時半ごろに太陽の4分の1が隠れる部分日食になる。

暗い黄緑色の領域は、月と地球によって太陽が完全に隠れてしまう影。地球上の青い領域は部分日食が見られる地域だ。

日食のメカニズム

月は地球の周りを平均27.32日で公転する。しかし、その間に地球が太陽の周りを30度も動いてしまうため、地球から見て月が太陽を追い抜くには平均29.53日かかる。

月は、地球と太陽の間を通過するとき、影の側が地球を向くので「新月」になる。その度に日食が起きてもよさそうなものだが、実際には、部分日食を含めても平均5回に1回しか起きない。

地球を一円玉(直径2センチ)の大きさで描くと、月は60センチ離れた五円玉の穴だ。新聞紙面なら隣のページに描かなければならない。太陽は235メートル離れた2.2メートルの球体だ。

しかし、新聞や教科書などで図解される日食の仕組みは、次のように距離と大きさが極端にデフォルメされている。

太陽が月に完全に遮られてしまう領域を本影(暗い黄緑色)といい、一部が遮られる領域を半影(青色)という。皆既日食は月の本影の中に、部分日食は半影の中に地球が入ったときに起きる。

月から伸びた三角形の本影は、円すい状で非常に細い。

 

実際の縮尺で描いてみよう。

静止衛星は36,000km

気象衛星ひまわりなどの静止衛星は、赤道上空3万6000キロで地球の周りを回っている。国際宇宙ステーション(ISS)の高度は400キロにすぎず、地球に張り付いているように見える。

月は380,000km

月までの距離は平均38万キロ。月の楕円軌道を表示すると、半径6371キロの地球は点になってしまう。

太陽までの距離は1億5000万キロ。月の軌道ですら画面の1ドットになる。はるか彼方の太陽が生み出す影は非常に細い。

月と太陽が同じ平面上にあるならば、影は必ず地球に落ちる。しかし、実際には、月の軌道は太陽の軌道に対して5.1度ほど傾いている。細長い本影にとっては重大だ。平均すると8回のうち7回、地球の上(北)や下(南)を通り過ぎてしまう。

2019年11月の新月

金環食の1カ月前、11月27日の新月は、月の本影が地球の北を通過する。

本影の先端は、地球一つ分ほど離れて通り、日食は起こらない。

金環食が起こるわけ

地球は、わずかに潰れた楕円を描いて太陽の周りを回っている。太陽は北半球の夏場に最も遠くなり、冬場に最も近くなる。月もその影響を受け、本影の長さが36万7000キロから38万キロの間で増減する。

月は、地球だけでなく太陽の引力にも影響を受けながら地球を回っている。このため、地球との距離(重心間距離)は、35万8000キロから40万6000キロの間を複雑な周期で増減する。

月の本影の長さと地球から月までの距離がほぼ同じなのは、天の配剤だ。影の方が長い時の日食は皆既日食になり、短いときには金環食になる。12月の日食は、太陽が1年で最も近く(影が短く)、月までの距離が平均的な局面で起きる。本影の先端は地球に届かない。

2016年3月9日の皆既日食

東アジアでは、2016年3月9日にも皆既日食が起きた。

範囲はマレーシア西のインド洋からハワイ沖の太平洋までの数千キロだったが、人が住む地域はインドネシアの一部にすぎなかった。その中の最大都市、パレンバンではスモッグが発生し、観測者を落胆させた。

青い領域は月の半影。暗い黄緑色は本影で皆既日食の範囲が地上に届いている。

地球にとって日食はありふれた現象だが、ほとんどの人間にとっては、皆既日食は一生に一度も体験できない天体ショーだ。地球がタイミングよく自転して、直径100キロ程度の丸い影がちょうど自分の住む場所を通り、しかも晴れていなければならない。空を見上げる余裕を持ち合わせている必要もある。

現在では世界中の日食のニュースが伝えられているが、通信もマスメディアもなかった明治以前、皆既日食の記録は極めて稀だ。日本で次に皆既日食が見られるのは2035年。本影は富山や長野、群馬を通過し、東京や名古屋では部分日食になる。今世紀中に日本の大都市の住民が皆既日食を経験することはない。

国内で起きる日食
日時場所種類
2030年6月1日北海道金環食
2035年9月2日信越・北関東皆既日食
2041年10月25日北陸・東海金環食
2074年1月27日鹿児島金環食
2095年11月27日広島・大阪金環食

出典:国立天文台、NASA

ひまわりが捉えた日食

人にとっては文字通り「千載一遇」の日食も、地表の3分の1を10分ごとに撮影している気象衛星ひまわり8号にとってはそれほど珍しくない。2016年の皆既日食でも、月の影を完全に捉えている。

12月の日食はどう見えるか

12月の金環食は各地でどのように見えるだろうか。以下のグラフィックスでは、選択した場所と時間の太陽と月の位置関係を計算している。シンガポールでは日本時間で14時過ぎに金環食が観測できることがわかる。

【方位センサーを使う】方位センサーを備えたタブレット端末やスマートフォンでは、スクリーンを実際の方角に向けると日食が表示されます。太陽光を直接見ないよう注意してください。

方位センサーは地球の地磁気を利用するため、磁石や電気製品が近くにある室内では正しい方角を示しません。表示の精度はセンサーに依存します。センサーの利用を許可する必要がある場合があります。古いバージョンのiOSの、設定▼Safari▼モーションと画面の向きのアクセスを許可する必要があります。

【データについて】

日食期間中の月と地球の座標は、米航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所が公開している天体情報システムHorizonsの計算値を用いた。その他の惑星の位置は、2013年時点の軌道要素を用いてブラウザ内部で計算している。人工衛星の位置は、北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)の軌道要素を用いて計算している。背景の恒星は、欧州宇宙機関(ESA)のヒッパルコス星表を利用した。

ひまわり8号の映像は、情報通信研究機構(NICT)が加工・配信しているひまわり8号リアルタイムWebを使用した。地球と月の表面画像はNASAの公開データを使用した。