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旧島越駅のホームに続いていた階段。津波に耐えて9段だけ残った。再建された線路を列車が通過した=岩手県田野畑村で

 どっしりとした堤の上を列車が行く。立ち並んでいた人家は消えうせ、かつての駅でホームに続いていた階段が9段残るだけだ。

 岩手県沿岸を走る三陸鉄道。2011年3月の東日本大震災で大きな被害を受けた。田野畑村の島越(しまのこし)駅は2階建ての駅舎が津波で流失し、線路も高架ごと流された。

 島越集落の中心にあり、三鉄の開業当初から地元の住民らが運営してきた駅。震災から3年後、山沿いに駅舎が再建され、列車の運行も再開した。

 だが、駅近くに住んでいた初代駅長の幕内(まくうち)茂也さん(85)は再開後、まだ乗っていない。これから先も「もう乗ることはない。悪い思い出だけだもの」。

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 震災当日、自宅から離れていた幕内さんは、妻加津子(かつこ)さん(84)を捜しに戻った。道すがら見たのは、土の中に逆さまに埋まった何人もの遺体。加津子さんは助かったが、近所でも多くの人が命を落とした。

 集落の130世帯が津波で壊滅し、高台移転で住民はばらばらに。線路が再びつながっても、暮らしは断ち切られたまま。「過ぎ去ったことだ」。海の見えない村中心部に移った幕内さんは、何度もつぶやいた。

 文 ・日下部弘太
 写真・田中 久雄

 三陸鉄道 岩手県で1984(昭和59)年に開業した第三セクター路線。宮古−久慈間の北リアス線、盛−釜石間の南リアス線を運行している。2011年の東日本大震災で全線が不通となったが、5日後に一部で運転再開。14年4月に全線が復旧した。今年3月23日、震災から不通が続いていたJR山田線の釜石−宮古間が復旧、三鉄に移管され、計163キロの三セク最長路線になる。合わせて全線を「リアス線」と改称する。

復興へと歩む三陸鉄道の沿線を巡る(動画)

 

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