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半田駅を出発し、大府方面に向かう列車=愛知県半田市で

 愛知県半田市出身の童話作家新美南吉。26歳だった1940(昭和15)年3月4日、武豊線半田駅で、5歳下の異母弟益吉の出征を見送った。

 日記にこう記している。「いよいよ汽車が来た。(中略)僕は突然泣けさうになつて来た。涙がこぼれてはいかんと思つて、仰向きかげんにして手をふつた」

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 南吉は4歳で母と死別し、8歳で養子に出された。その体験は、18歳で発表した代表作「権狐(ごんぎつね)」をはじめ、悲哀の漂う作風に影響したとされる。そんななか、兄弟仲はよかった。新美南吉記念館の学芸員遠山光嗣さん(46)は「南吉は弟の社交的なところを敬い、益吉も賢い兄を慕った」と語る。益吉が勤めを始めた時に南吉は「弟よ 風邪ひくな」と詩に書いた。

 40年に出征した益吉は体調を崩し、すぐに戻ったが、南吉は43年、結核のため29歳で死去。翌年、益吉は戦地に召され、やがてフィリピンで没した。

 終戦から73年たった半田駅。夕刻、大府へ向かう列車を見送った。踏切を過ぎると右に曲がり、やがて見えなくなった。

 文 ・垣見窓佳
 写真・小嶋明彦

 武豊線 武豊と大府を結ぶ19.3キロで全10駅。武豊−熱田間が1886(明治19)年に開業したのがはじまり。この区間の一部は後に東海道線に組み込まれ、枝線となった大府以南が武豊線になった。現在は、平日で上下合わせて82本が運行。朝、夕には名古屋発着の東海道線直通列車もある。

知多半島を走るJR武豊線(動画)

 

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