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月明かりに照らされた熊野川の鉄橋を渡る列車=三重・和歌山県境で

 紀勢線の列車が熊野川の鉄橋を渡り、三重県から和歌山県に入った。到着した新宮。26年前に46歳で亡くなった芥川賞作家中上健次の故郷である。

 紀州を舞台に複雑な血縁、地縁の中で生きる人間を書いた。自身にも異父兄姉、異母弟妹がおり、少年期に異父兄が自殺した。出身地は「路地」。中上独自の表現で、差別されてきた地域だ。郷土史家山崎泰さん(64)は「故郷が、作家としての源」と言う。

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 兄の自死を描く文壇デビュー作「一番はじめの出来事」でも故郷は描かれる。主人公の小学生の「僕」は鉄橋の列車を眺め「長島行きと書いてあるのだろうか?名古屋行きと書いてあるのだろうか?」と思う。こうも書く。「海と川と山にはさまれたいきどまりの街だ。僕たちがおおきくなれば、いったいどこから別の街にいけばいいのか」−。

 新宮市で書店「荒尾成文堂」を営む荒尾寔(まこと)さん(74)は、同じ新宮高校出身で2年先輩。文壇で地歩を築いた後輩が帰省すると、徹夜で飲んだ。書店には今も100冊近い中上作品。時々ファンが訪れ、買っていく。

 文 ・木造康博
 写真・大橋脩人

 JR紀勢線 紀伊半島の海岸沿いを走る。亀山から和歌山市までの384.2キロ。東側は、1934(昭和9)年までに亀山から尾鷲まで通じた。西側は、40(同15)年までに、和歌山方面から新宮を経て紀伊木本(現・熊野市)まで開通。尾鷲−紀伊木本間は戦後に建設し、59(同34)年に全線開通した。亀山−新宮間はJR東海が管轄。名古屋−新宮間は特急ワイドビュー南紀で約3時間半。

熊野灘沿いを走るJR紀勢線(動画)

 

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