トップ > 中日スポーツ > 大相撲 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

【大相撲】

張られてばかりの炎鵬がいきなり張り手をお見舞い…よく考えた抜いた頭脳相撲見せた[北の富士コラム]

2020年1月12日 22時20分

炎鵬(手前)は宝富士を下手投げで破る

写真

◇12日 大相撲初場所初日(両国国技館)

 初日から良い相撲が多く見られたのは何よりでした。それではいきなり、炎鵬が鮮やかな下手投げで勝った一番を振り返ってみよう。

 相手の宝富士は最も嫌な相手の一人である。体は岩のように堅いし、力が強い。積極的に前に出て来ないので技がかかりにくい。

 そこで炎鵬は一計を試みる。予想だにしない右からの張り手を見舞った。張られてばかりの炎鵬が張ったのだから、宝富士も驚いたことだろう。

 いつもは怪力に物を言わせて強引に出る宝富士の腰が引けてしまう。低い体勢から炎鵬が寄って出る。投げを予期していた宝富士は意表を突かれたようだ。寄られて俵に足が掛かり、面食らって攻め返そうと寄り返す。この機を、待ってました、とばかり炎鵬が下手投げで難敵を下した。

 よく考え抜いたと思われる頭脳的な相撲は、力強さも感じさせた。この分では今場所もやってくれそうである。これで今夜のビールはうまいことだろう。こいつは春から縁起が良い初日である。

 朝乃山と御嶽海の一番も熱戦であった。平幕に落ちたとはいえ、実力は朝乃山に勝るとも劣らない。立ち合いは、御嶽海が一瞬早く立つと右をのぞかせ一気に攻め立てた。実に鋭い出足だったが、朝乃山が土俵際に詰まったところで引いてしまった。

 せっかく先手を取り、主導権を握りながら、悪い引き技に出たのは惜しまれる。反対に、この機を逃さなかったのが朝乃山。引きに乗じて反撃に転じ、左上手を引き、右も差し、万全の体勢をつくり、そのまま寄り切った。

 やはり朝乃山の右四つは魅力的である。長身で足長でありながら、下半身の安定感は抜群のものがある。

 大関の件はまだ盛り上がりは見せてはいないが、勝ち進んでいくと一気に昇進もあるだろう。上々のスタートを切った朝乃山であった。

 貴景勝も落ち着き払った相撲で一気に妙義龍を押し出した。自信満々の取り口は、見ていて危なげない。

 白鵬は、先場所敗れている相手だけに厳しい立ち合いを見せた。予想通り右から張って大栄翔の突進を止め、ガッチリ左四つに組み止めた。これで万全となった白鵬は、しっかり引きつけ、慎重に寄り切った。心憎いような強さであった。

 勝負は立ち合いで決まったといっていい。張り差しに出るのは間違いなし、と私は見ていたが、大栄翔は何の策もないまま当たって、まんまと術中にはまった。

 これから対戦する力士はもっと考えるべきである。逆に張り手を見舞うとか、立ち合いの変化だって時と場合にはやるべきだ。

 すっかり稽古場で骨抜きにされ「お嫁に行った晩」になっている。その心は「相手の言うまま」。おっとダジャレを言っている場合ではない。誰か白鵬をぎゃふんと言わせる勇士はいないのか。それでも男か。私一人いくら力んでもしようがない。やはり貴景勝と朝乃山に期待するしかないのか。

 鶴竜はいかにも元気がない。体の張りもなし。豪栄道も右に同じである。辛い日が続くが、せいぜい頑張ってもらいたい。

 それでは原稿を送ってささやかな晩酌とするか。おかずは熊本から送って来た馬刺し。どうやらビールより焼酎の方が良さそうだ。

(元横綱)

 

この記事を印刷する

PR情報

閉じる
中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日スポーツ購読案内 東京中日スポーツ購読案内 中日スポーツ購読案内 東京中日スポーツ購読案内 中日新聞フォトサービス 東京中日スポーツ