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【大相撲】

[北の富士コラム]今場所の遠藤はひと味違う 貴景勝の引く戦法も冷静に対処

2019年9月13日 21時59分

貴景勝(右)を攻める遠藤

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 6日目は大荒れだった。5連勝と順調すぎるほど、勝ち続けていた貴景勝に土がついた。相手は誰あろう遠藤その人である。ずいぶんと大げさな、時代がかった言い方だが、今場所の遠藤はひと味違う一面を見せている。相撲のうまさは言うまでもないが、しぶとい取り口が目につく。総見の時でも、一番良い稽古をしていた。こんな積極的な遠藤は初めて見た。

 初日こそ負けたが、2日目以降は、いかにも遠藤らしい技能的な相撲で4連勝。特に朝乃山戦に見せた巧さとしぶとい取り口はいかにも遠藤らしさが光った。

 その余勢をかって、遠藤は貴景勝の前に立ちはだかった。立ち合いは両者、頭で当たり合った。当たりは互角だったが、先手を取って、貴景勝が突っ張った。遠藤は一歩二歩、少し押し込まれたが、しっかりとあごを引いてこらえ、左前みつを狙う。ここで貴景勝の足が止まった。そして体を右に開いてはたいた。今場所もこの引きで2番勝っている。

 人間は苦しくなると、ついやってはいけないことをやってしまうものだ。ここで悪魔がささやくのである。「今引けば勝てる」と。精神力の強さでは定評のある貴景勝がついに引いた。それも二度までもである。実は勝負はここでついていたと言っても過言ではない。

 遠藤は難なく足を送り、余裕をもって残す。そして、残しながら、さらに右で前みつを取りに踏み込む。思わず貴景勝が再度、はたいた。予期していた遠藤がつけ入るように前に出ると、貴景勝は大きくバランスを崩し、右膝からガクンと崩れ落ちてしまった。

 勢いに乗って勝ち進みたい貴景勝だったが、冷静な遠藤の手の内を読まれ、突っ張って引く戦法も不発に終わった。この日の貴景勝としては、立ち合いもよく、突き押しで一気に攻める気は十分にあったと思われる。しかし、遠藤の鉄壁の守りに、禁断の引き技に出たのが命取りになってしまった。

 この一番で私が思ったのは、これからの遠藤への大きな期待、貴景勝の悪い引き癖に生じた不安である。中日を前に、全勝は伏兵隠岐の海ただ一人、それに続くのが炎鵬、石浦の小兵、妙義龍、遠藤の技能派、明生にぐんぐん調子を上げてきた御嶽海、そして大関復帰なるかが注目の貴景勝の1敗組。鶴竜と豪栄道が2敗で続く。

 こりゃ面白いことになりそうだ。これで中日あたりで炎鵬と遠藤の一番が組まれると、もう言うことなしである。

 さて、今夜はイクラのしょうゆ漬けとシャケの切り身で親子丼といくか。少し尿酸値が高いが気にしない。気にしない。(元横綱)

 

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