トップ > 中日スポーツ > 大相撲 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

【大相撲】

貴源治よ、前に出よ、負けを恐れるな! 私は焼肉食べすぎだが…

2019年7月16日 紙面から

◇北の富士評論「はやわざ御免」

 今現在幕内の前半戦で一番見てみたい相撲はこの炎鵬と貴源治の一番ではないだろうか。私だけかな。両者は共にこのところ連敗中、互いにこのあたりで是が非でも勝っておきたいところだ。

 熱戦を見たい、たぶんなるだろうと予想していたが意外や意外、炎鵬が立ち合いから果敢に攻めて貴源治に反撃の間を与えず一気に寄り切ってしまった。炎鵬は二日続けて一方的に突き倒され小兵の悲哀を思い知らされていただけに、この一番にかける気持ちは並々ならぬものがあったと見る。一方の貴源治はここまで3連敗中、しかし相撲の内容はどの相撲も良く攻めて前に出ている。いずれも逆転されたものですべて惜敗。気を落とすような相撲ではない。

 立ち合い踏み込んで潜って来る炎鵬に対し、貴源治は突っ張っているが低い相手に上から突っ張っても効果はまったくない。腰も高く引けてしまっている。いわゆる及び腰で下から攻めて来る炎鵬に逆に攻められてしまった。炎鵬は気力を込めて突き返しさらに二本を差し、またさらに相手の両足を抱き込むようにして寄り切った。炎鵬はここまで2連敗の鬱憤(うっぷん)を晴らすかのような会心の相撲で誠に力強いものがあった。これで今後の活躍も大いに期待して良さそうだ。

 一方、負けた貴源治は最悪の取り口であった。敗れた大きな原因は気持ちで負けていたことである。私は貴源治の最大の長所は恵まれた体格だけでなく、負けん気の強さを買っている。その貴源治がこの一番は完全に気力負けだ。負けが込んですっかり気落ちしている。そんなことでどうする。負けても(たた)かれても引かれても前に出ることを忘れてはいけない。

 何日か前の新聞にロッテ時代の愛甲選手が落合さんに前に出ろと教えてもらったと書いてあった。私も亡くなった星野仙一さんに難しい球ほど前に出て捕球すると聞いたことがある。あの坂本龍馬も「死ぬ時はたとえドブの中でも前向きに倒れよ」と確か司馬遼太郎さんの「竜馬がゆく」で読んだ記憶がある。あるいは池波正太郎さんの本かもしれない。貴源治よ、龍馬のように前に出よ。負けを恐れるな。

 昨日くどくどと長い記事になってしまった。本日はこの一番だけにしたい−と思ったが、えらいことが起きた。白鵬が逸ノ城に敗れる波乱は立ち合いの失敗。もろ差しを狙って出た白鵬だが、体勢がいつもより高かった。それに両足がそろってスリ足になっていない。右をのぞかせたが逸ノ城に左上手を許したのは大きな過ちであった。多分もろ差しに行ったのであろう。左で上手も引けない白鵬に対し、逸ノ城がここが勝機とばかりに両まわしを引きつけて一散に寄ると白鵬は何の抵抗もできずに土俵を割った。完敗である。白鵬の顔に「しまった」と書いてある。あの一気の寄りは想定外であったことだろう。まさに油断大敵を絵に描いたような一番だった。この負け方は白鵬の自信を揺るがす一番になったと私は思っている。10日目からの相撲に少なからず影響が出るかもしれない。

 高安も敗れた。明日は土俵に上がれるか心配である。鶴竜はますます好調。一方、私は昨夜焼き肉を食べ過ぎて体調悪し。今夜は外出禁止。(元横綱)

  

 

この記事を印刷する

PR情報

閉じる
中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日スポーツ購読案内 東京中日スポーツ購読案内 中日スポーツ購読案内 東京中日スポーツ購読案内 中日新聞フォトサービス 東京中日スポーツ