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【大相撲】

不屈の闘志は買うが心配

2019年5月19日 紙面から

◇北の富士評論「はやわざ御免」

 まずは朗報から。貴景勝の再出場が決まった。驚きの再出場に賛否両論が沸き上がる。私は、どちらかというと再出場反対派ではある。しっかり治してからでも決して遅くないと思うからだ。

 一抹の不安を抱きながら、本来の相撲を取れるとは思えない。不運にも再度、けがでもしたら元も子もない。それこそ名古屋の出場も危うくなる。貴景勝の不屈の闘志、武士道精神は大いに買うが、心配の方が大勢を占める。しかし、さいは投げられた。健闘を祈りたい。

 それでは、幕内前半から2番振り返ってみたい。今や人気力士となった炎鵬と、その炎鵬に猛烈な対抗意識を持っている照強の一番。幕内では初顔だが、私はこの両者の対戦を十両時代から注目している。

 連日、大きな相手を面白いように転がしていた炎鵬が、自分と同じタイプの照強には取りづらそう。十両の対戦も1勝2敗と負け越している。大きな相手には思い切り当たるが、小さい照強は勝手が違うようである。

 反対に照強は自信満々。当たり勝ってすぐに右で上手を引いた。左を差した炎鵬が食い付こうと体勢を低くしようとするが、照強が右から出し投げを打つ。この投げを、左足を踏み込んで残そうとする炎鵬。その足を狙っていたかのように右足を飛ばし、裾払いの奇襲。この手は炎鵬も予想外だったようで鮮やかに決まり、あのしぶとい炎鵬が天井を向いて倒れた。胸のすくような照強の裾払い。さしもの炎鵬も、この日ばかりは完敗であった。今後も、この2人の戦いは何が飛び出すか分からない取組となるだろう。

 もう一番、朝乃山は6日目に良いところなく負けて評価を下げたが、この日は強さを存分に見せつけた。巧者・嘉風の動きに体がよく反応し、余裕を見せて寄り切った。この相撲を忘れないことだ。

 内に秘めた闘志は当然、持ってはいるだろうが、少しは表に出しても良いのではないか。これは好きずきがあるので、それほど重要ではない。それより、今場所は調子も良いので少し助平根性を出して、優勝争いの仲間入りでもしたらどうだろう。

 上位陣では栃ノ心の強いこと、怖いぐらいである。立ち合いは少し後退したが、左を取って出る速さはすごかった。腰の重い琴奨菊を軽々と持ち上げ、一気に寄り切った。同じ全勝の鶴竜よりも、迫力と内容の良さは勝っている。

 ふがいない豪栄道と高安が勝ってホッと一息。だが、両大関は優勝争いではすでに圏外と言っても良い。せめて鶴竜や栃ノ心と対戦する時は大関の意地を見せてほしい。彼らの存在価値を示すのは、それしかないといってよいのである。

 この先輩大関がしっかりしてくれていたら、貴景勝もゆっくり治療に専念できるかもしれない。それは、私の考えすぎだろうか。本当は私も再出場反対と言いながら、少しはうれしいのである。今夜は雨になりそうだから、外出はよそう。 (元横綱)

 

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