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【大相撲】

まさに好事魔多し 貴景勝に“新境地の代償”

2019年5月16日 紙面から

◇北の富士評論「はやわざ御免」

 4日目に一大事が起きてしまった。貴景勝が御嶽海との一番で、どうやら右膝を痛めてしまった。

 このところ5連敗している相手とあって、貴景勝は今場所一番の当たりを見せた。しかし御嶽海も一歩二歩後退したが、重い腰でよくこらえ、左前みつを引いて残す。押し切れないと見た貴景勝は、すかさずもろ差しとなって寄り立てる。その寄りを、御嶽海が右の上手投げで懸命に残す。

 問題のけがは、この投げを残した時にやってしまった、と私は見た。押し相撲一本で通してきた貴景勝にとって、投げを打たれる経験はおそらく、そう多くはなかったはずである。押して前に出る時と、四つ身から寄る、あるいは投げをこらえる時の下半身の使い方は全く違うものだ。

 特に両膝にかかる負荷は相当なものがある。それでも貴景勝は攻め手を緩めることなく必死に残す御嶽海を、不得手の四つ身の体勢から堂々と寄り切った。これで押し切れなくても、もろ差しから寄る新境地を見いだしたと思わせたが、その代償はあまりにも大きかったようだ。

 膝の裏を抑えていたから、たぶん靱帯(じんたい)でも伸ばしたのかもしれない。まさに好事魔多しである。大事にならなければ良いのだが心配である。

 3日目はふがいない相撲で負けた豪栄道と高安は別人のような相撲をみせた。高安は気迫あふれる体当たりで、前日に新大関を破り、鼻息の荒い北勝富士を土俵下まで飛ばしてしまった。こんなすごい相撲を取れるのに、困ったお相撲さんだ。このムラッ気を治さなければ、優勝も横綱もないと思ったほうが良い。

 豪栄道にも同じ事が言える。4日目の立ち合いは厳しかった。体勢が低く、しかも踏み込みが十分だったので、すくうようにもろ差しになった。この呼吸である。余計な張り差しなんぞやる必要がない。優勝の1番手に挙げている手前、勝ってくれなければ小生の信用と評判に傷がつきかねない。もっとも、大した信用でもないので、気にすることはない。

 鶴竜は、3日目の相撲で薄氷を踏みかけたが、4日目は油断を見せずに遠藤を寄せ付けなかった。久しぶりに鶴竜の元気な相撲が見られて安心している。

 それにしても貴景勝は武士道の精神の権化のようだ。痛そうな顔は一切見せず、自力で花道を歩いて引き揚げた。支度部屋でも一言も弱音を吐かなかったらしい。良い根性だ。恐れ入る。もし彼に休まれたら、今場所の火が消える。かといって無理はしてもらいたくない。私も少し熱っぽいので早く休もうか。それではこれくらいにしましょう。 (元横綱)

 

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