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【スポーツ】

小出義雄「遺す言葉」第7回 「走れ」一辺倒の指導では成長が頭打ちになってしまう

2019年7月26日 紙面から

 「能ある鷹(たか)は爪を隠す」とよく言う。逆に「能のない鷹は爪を出す」とは言わない。だけど、実際には、能力のない人が目立つ場面に出くわすことは多々あるものだ。

 スポーツの世界だけではない。目先の小さな成功に満足し、本来ならその先にあるはずの大きな成功を取り逃がしてしまう人は多い。世の中に、いろいろな分野で金メダルを取れる素材はいるが、トータルして能力を引き出せる先生が少ないからだと、僕は見ている。

 ただただ「走れ」だけでは、大きな成功は望めない。確かに、それでも、目先のささやかな成功は得ることができる。ここまでなら「能のない鷹が爪を出す」にとどまるケース。走らないより走った方が強くなるのは当たり前だ。しかし「走れ」一辺倒だと、ある程度までいくと、子どもは必ずといっていいほど成長が頭打ちになってしまう。

 僕は、ランナーの基本は距離を踏むことだと確信している。だから「走れ」は間違いではない。僕が言いたいのは、その上で、さらなる能力をいかにして引き出すかということ。子どもには、それぞれ個性がある。指導者は、個々と向き合うことを大事にしなければいけない。日々、一人一人に目を凝らし、的確な指導を心掛けなければいけない。指導者は心理学、生理学、栄養学など多方面にわたる勉強をすべきである。僕がいつも現場に立ち続けたのは、ただ「走れ」というためだけではない。 (聞き手・満薗文博)

   ◇   ◇

 小出さんの逝去から2カ月後、千葉県佐倉市の自宅を訪ねた。遺品を整理した家族が「私たちも知らなかった、小さな字でびっしり書き込まれた多くの日誌が見つかりました」と話した。能ある鷹は爪を隠していた。

 

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