トップ > 中日スポーツ > スポーツ > 首都スポ > 記事

ここから本文

【首都スポ】

今年もまた早慶戦を見守った 100歳の早大野球部OB・大道信敏さん「早稲田で良かった」

2019年11月13日 紙面から

自身の野球人生を話す大道信敏さん=東京都調布市で(平野皓士朗撮影)

写真

 早大野球部OBの大道信敏さん(旧姓中島)が12日、100歳の誕生日を迎えた。佐賀商で甲子園に出場、早大で遊撃手として活躍し、戦後は大昭和製紙の野球部結成を手助けした。準優勝した1949年の都市対抗野球決勝では、「和製火の玉」と呼ばれ、のちにプロ野球の毎日などでプレーした荒巻淳から本塁打を放って久慈賞(敢闘賞)に輝いた。ことしも早慶戦をスタンドから見詰めた大道さんが、半生を語った。 (構成・小原栄二)

 早大野球部のOB会・稲門倶楽部会長も務めた大道さんは、今秋の早慶戦も長女の千佐子さんとスタンドに足を運んだ。1回戦で慶大に優勝を見せつけられると悔しがったが、2回戦の雪辱で留飲を下げた。慶大戦となると今も熱いが、実は慶応OBとして応援歌「若き血」を歌っていたかもしれない。

 「佐賀商のコーチはみんな慶応の先輩。慶応の合宿所に受験勉強に行ったこともあった。慶応に来い、来いって言うから大丈夫だと思っていたら落っこちた。数学が弱かったからかと思いましたが、行くところがないから、兄貴が早稲田だったので、早稲田の専門学校に入った。(野球部とは縁がなく)戸塚のグラウンドで練習を見ていたら、知った先輩が来て、話をつけてやると言ってくれて入部した」

 のちに阪急に入った兄・喬さんに教わって始めた野球。佐賀商では1935(昭和10)年夏の甲子園に二塁手で出場、慶大に入るものと信じていた。早稲田では商学部へ編入して野球部で遊撃手として活躍した。早慶戦にも出場し、連勝にも貢献した。

 「何で慶応に入れなかったか考えたことがあるんですよ。そうそうたるメンバーは今でも頭から離れない。慶応なら試合に出られなかったかもしれない。逆に早稲田で良かった」

 世界大戦が激しくなった42(昭和17)年9月に繰り上げ卒業し、大道家の養子となり八幡製鉄に入社、10月には召集された。早大の同級生で岐阜商(現・県岐阜商)の甲子園優勝投手だった松井栄造は中国・湖北省で頭に銃弾を受けて命を落とした。同期12人のうち5人が戦死。大道さんは戦地におもむくことなく終戦を迎えた。

 「点呼のときに毎日、毎日、○○見習士官って呼ばれていく。もうオレも呼ばれるかなって、毎晩思っていました。(終戦間際は)広島の高射砲隊にいて、B29が北九州の八幡製鉄所を狙うというので北九州の要地防空隊に回った。そしたら広島に原爆。知った人たちがずいぶん亡くなりました。終戦は博多で迎えました。ぼくらの野球の同期はほとんどが戦死。戦争は本当に罪悪です」

 戦後は八幡製鉄に復職して野球部の復活を手伝い、兄がいる東京に戻ってからは名門クラブ・横浜金港クラブでプレー。その後、大昭和製紙野球部の創部に参加した。

 「早稲田の先輩で(大昭和製紙の)浅井礼三さんが、大道が野球をやめて草野球か何かやっているといって、ぼくのところに来た。野球部をつくりたいから来てくれと言われた。ぼくは野球は打ち切ったつもりだったので3、4年ならという条件付きで入った」

今秋の早慶戦を娘の千佐子さん(左)と観戦した大道さん=神宮球場で

写真

 大昭和製紙で49(昭和24)年の都市対抗に出場し、星野組との決勝で、「和製火の玉」荒巻淳からホームラン。準優勝に終わったが、大道さんが早大から石井藤吉郎(のちの早大監督)らを入部させて強化したチームは53年に優勝した。

 「荒巻は懸河(けんが)のごときドロップ。直球も速い、速い。目をつぶって打ったんじゃないかというぐらい速かった。ホームランを打ってパッと野球をやめた。ぼくは久慈賞と美技賞(ファインプレー賞)をもらった」

 その年の9月に生まれた次女は「久」「美」を取って久美子さん。思い出に残る現役ラストイヤーだった。

 大昭和製紙を退社した後も、知人の会社で80歳まで役員を務めた。若いころは浴びるほど酒も飲んだ大道さんの健康法は寝る前に必ず飲んだレモン果汁。レモン半分ずつを夫婦で分けた。いまはシークワーサー。72歳で始めた詩吟は、今も大会に出る。

 「40歳のときに胃潰瘍をやって、酒、たばこ、マージャンを全部やめました。医者が胃を取るというから、内科的に治してくれといったら、酒、たばこをやめるなら、言われてやめた。詩吟は72歳のときに、調布に越してきて市役所の出張所の募集を見て始めた。やってみたら、やさしいもんじゃない。若いころ、神楽坂の芸妓(げいこ)さんが、あなたの声は裏声、へそ下三寸から声を出すと七色の音色になると言っていたのがようやくわかったね」

    ◇

 首都圏のアスリートを全力で応援する「首都スポ」。トーチュウ紙面で連日展開中。

 

この記事を印刷する

PR情報

閉じる
中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日スポーツ購読案内 東京中日スポーツ購読案内 中日スポーツ購読案内 東京中日スポーツ購読案内 中日新聞フォトサービス 東京中日スポーツ