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【首都スポ】

[競輪]モーグルとの“二刀流”に挑む原大智 ケイリンでも五輪メダル

2019年5月14日 紙面から

平昌五輪のモーグル銅メダリストの原大智。競輪との“二刀流”に挑む=9日、日本競輪選手養成所で(大森徹撮影)

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 五輪メダリストの新たなチャレンジ−。2018年の平昌冬季五輪フリースタイルスキー男子モーグル銅メダリストの原大智(22)が競輪の世界へ飛び込む。日本競輪選手養成所(静岡県伊豆市)第117期生の特別選抜試験に合格。9日に入所式を終え、約1年間は選手になるための必要な知識や、脚力をつけるための厳しいトレーニングを積む。順調にいけば、来年7月に競輪選手としてプロデビューの予定。原はモーグルの現役も続行する構えで、競輪とモーグルの“二刀流”を目指す。 (東佑介)

 出した答えは“二刀流”だった。過酷な道だと分かっていながら、五輪メダリストはこれまでやってきたものとは別の、もう一つの世界へと進む決断を下した。

 「かなり前からモーグルのナショナルチームのトレーナーから『競輪をやってみないか』と誘われてはいた」

 もちろん最初は断った。競輪そのものを知ってはいたが、自身がプロになることなど全く頭になかった。それに、もちろん競輪界も甘いものではないと思っていたからだ。冗談半分に聞こえたのも無理はない。それでも熱心な誘いは続いた。

 「そこまで期待をしてくれているなら後悔しないように、チャレンジしたいと思った。だから平昌五輪の前あたりに、やってみようと決意した」。絶対的な信頼を寄せるトレーナーからの言葉と、その気持ちに応えたいという思いが心を動かした。

 実際に自転車に乗り始めると、そのスピードに魅了されていく。モーグルで鍛え抜かれた脚力が武器になることは言うまでもないが、自転車という道具を使い、自身の身体能力で極限まで速さを追い求めるという一種の快感−。

 「脚を使うところは似ていると思う。スピードを出すということが好きで、そこに魅力を感じた」。単純な競技のようにも見えて、ハンドルやサドルの上げ下げ、乗り方など少しの差で全く違う結果が出る。この繊細さが、探求心にも火をつけたのかもしれない。ますます引かれていくようになり、この頃には五輪でのメダルの有無にかかわらず、競輪学校に入ろうと思っていた。

 格好いい、楽しいで始めたモーグル。この種目で五輪に出場して金メダルを取りたいと思い、12歳で本格的に始動した。そして迎えた平昌五輪は、初出場で銅メダルを獲得。フリースタイルスキーの競技全体でも、日本男子として初めて表彰台に立つ大仕事をやってのけた。「銀と銅の差はあまりなかったと思うけど、金メダルが遠かった」。勝率5割以上という絶対王者のミカエル・キングズベリー(カナダ)の壁は高く、当時を振り返ると今でも悔しさがよみがえる。

 「モーグルで北京(22年冬季五輪)は目指しているし、金メダルを取りたいと思っている。(入学が)来年だと、五輪の選考会が始まってしまうし、タイミングとしては本当に今しかないと思った。モーグルは開幕戦から2月までに(代表の座を)選考などで勝ち取りたい」

モーグルで銅メダルを獲得したときの滑り=18年2月12日、平昌で(共同)

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 モーグル一本にエネルギーを注げば“立ちはだかる壁”も乗り越えられるかもしれない。しかし、新たな環境で両立を成し遂げる気持ちは強い。

 19〜20年シーズンはモーグルができない状態になり、練習する機会も減っていく。競輪選手にはオフシーズンもない。それでも自転車のトレーニングが決して無駄にはならないことを実感しているからこそ、難題も計画通り進めていく。

 「自転車の練習でモーグルのパフォーマンス向上が素晴らしくあった。フィジカル面でも今季、すごい役立ったと思う」

 何もしないわけではない。技術に関しては低下ではなく停滞という認識で、感覚的にもすぐ戻せるという自信もある。それは積み重ねてきた努力と実績のたまものだ。さらに「今年の感じだと若い選手には、まだまだ負けやしないと思っている」と力強い言葉も出る。

 不安がないと言えば、うそになる。自転車に乗っている日数や経験が圧倒的に不足しているからだ。ゼロから始める今後について「自転車のことは全くの素人なので、大口はたたけない。先が見えない中で、このまま強くならなかったらどうしようかと思う」とポツリ。

 モーグルでの活躍から、周囲の期待は自然と「いずれはケイリンでも五輪でメダル獲得」と勝手に想像を膨らませるが「メダル…。今はそれを目指せるところまで行けたらいいなとは思っている」と冷静だった。

 五輪メダルを手にしたからこそ、そこまでの道のりがどれほど大変なのかということは熟知している。必死さを失わず歯を食いしばり、今は目の前の課題を一つずつこなすだけ。

 いよいよ競輪学校の生活が始まる。応援してくれる人や否定的な人、さまざまな意見はあるが「やっぱり無理だったとは言われたくない。やるからには成功させたいし、すごかったんだなと言われたい。期待に応えられたらいいと思っている」と力を込めた。人生一度きり、と踏み出した競輪の世界。まだまだ挑戦は始まったばかりだ。

<原大智(はら・だいち)> 1997(平成9)年3月4日生まれ、東京都渋谷区出身の22歳。172センチ、75キロ。日大スポーツ科学部競技スポーツ学科在学中。小学6年から本格的にモーグルを始め、16歳で単身「カナディアン・スポーツ・ビジネス・アカデミー」へ留学。モーグルでは2015年の全日本選手権で優勝、18年の平昌五輪で銅メダル。今年は1月にW杯で初の表彰台となる3位、2月の世界選手権ではモーグルとデュアルモーグルの2種目で銅メダルを手にした。特別選抜試験に合格し、今年5月に日本競輪選手養成所に入所。

◆原大智アラカルト

 ▼実はインドア派 大のアウトドア派という両親の影響で、スキー場や海へ連れて行かれたが、実は家で過ごすのが大好き。一つ間違えば、モーグルではなく、水泳の選手になっていたかも!?

 ▼ストレス解消はアニメ 休日はあまり外出したくないため、専らアニメ鑑賞をして過ごすのがお気に入り。自分の世界に入れることがその魅力のようで、心のよりどころになっているという。

◆原が22年北京五輪に出場するには?

 22年北京五輪の代表選考基準は未定。18年平昌五輪の選考基準を前提とすると、前年と当該シーズンの2年間を対象に国際主要大会(W杯など)の結果(8位以内1回以上か、10位以内2回以上など)により選出される。北京の場合は20〜21年、21〜22年の2シーズン。21〜22年の1シーズンに懸けるとしても、その時点でW杯に派遣されるような強化指定選手でいるために、20〜21年で国内大会などで一定の成績を残しておく必要があるとみられる。

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 首都圏のアスリートを全力で応援する「首都スポ」。トーチュウ紙面で連日展開中。

 

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