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【首都スポ】

[大学ラグビー]慶大、古豪復活へ栗原新HCの改革 ワセダOB三井さんをコーチに

2019年3月9日 紙面から

2月から練習をスタート。グラウンドではクールな口調で選手に話し掛ける新HCの姿があった(左から3人目)=横浜市港北区の慶大日吉グラウンドで(いずれも大友信彦撮影)

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 ラグビーのルーツ校に新時代だ。今季、創部120周年を迎える慶大ラグビー部に栗原徹・新ヘッドコーチ(HC、40)が就任。1999年度以来20大会ぶりの学生日本一を目指すシーズンへ始動した。日本最古の歴史を誇る名門・慶大で、選手としてトップリーグ、W杯を経験した指揮官を迎えるのは初めて。テストマッチ1試合最多得点世界記録など栄光に彩られた経歴を持つ新HCは、王座から遠ざかっているルーツ校復活へ、どんな改革を施そうとしているのか?  (取材・文=大友信彦)

 −昨季まではトップリーグのNTTコミュニケーションズでスキルコーチを務めていました

 栗原HC「現役を引退した後、2014年から5年間やりました。最初の年は、新任のロブ・ペニーHC(3月6日に退団発表)が夏まで来られなくて、僕がHC役を代行して、外国人スタッフが着任した後も『そのままやってて』と言われて、BKは僕が担当しました。分析係もやったし、5年間でいろんな経験ができました。NTTコムはトップリーグでもフィジカルの強い方ではなかったので、勉強になりましたね」

 −慶大の指導に生かせそうなことは?

 「力を入れたのは自チームの分析ですね。NTTコムはラインブレーク(ディフェンスラインの突破)のあとでミスする回数が多かった。チャンスだと思うあまり、無理にボールをつなごうとしてミスをするんですね。だから『抜けた後も急がず、落ち着いて攻めよう』とチームに呼び掛けたら、43%しかなかったボール継続率が70%台まで上がりました。

 ただ、ミスはどうしても出ます。15年W杯で日本が南アフリカに勝った試合でも、(日本には)自分たちのミスでボールを失った回数が8回あった。完璧にみえた試合でも、それだけミスは出る。逆に言うとひとつのミスを過剰に恐れる必要はない。それは学生にも伝えたい」

 −2月には英国へ視察に行きました

 「エディー(ジョーンズ=イングランド代表監督、前日本代表HC)さんにお願いして、イングランド代表に1週間同行させてもらいました。印象的だったのは、練習のグループ分け、時間配分などを工夫して、選手が短時間で必要なものを多くできるように作り込んでいたことです」

 −NTTコム時代のペニーHCも世界的な名コーチです

 「ロブがすごかったのはスタッフのマネジメントです。スタッフがやりがいを持って働けるように配置して、小まめに声をかけていた。スタッフがストレスなく働くと、選手のパフォーマンスも上がっていきましたね」

ゴールキックの精度も抜群だった(写真はNTTコム時代、2012年1月のリコー戦)=秩父宮ラグビー場で

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 −参謀役に、早大−東芝という経歴の三井コーチを招きました。慶大−サントリー−NTTコムという栗原さんとは接点がなさそうですが

 「5年くらい前、日本協会のコーチ研修で一緒になったのが始まりです。考え方は違うけど、それが刺激的。彼は個人でニュージーランド(NZ)でコーチの勉強をしてきたり、勉強熱心。チームにも僕にも新しい発想を持ち込んでくれると思って、自分がHCを務めるなら真っ先にお願いしたいと思ってました」

 −異例の人事です

 「はい、いろんなあつれきがあることは予想していました。でも、話してみないと何も始まらない。実際に話してみたらOB会も早大側も理解してくれて実現しました。

 伝統校というと保守的なイメージがあるけど、慶応はそもそもは革新的な試み、新しい発想で歴史を作ってきた大学。今回は驚かれるかもしれないけど、こんなことは10年後には普通になっているでしょう。送り出してくれた早大にも感謝しています」

 −栗原さんはトップリーグやW杯など多彩な経験を積んできました

 「試合もそうですが、サントリーやNTTコムの外国人選手やコーチから、自分にない発想を学びました。選択肢の多さ、失敗に見えたプレーを失敗にしないコミュニケーション…いい選手はみな、人間として魅力的ですね。慶大もいい人間の集まった、成熟した集団にしたいですね」

 −1年目の抱負を

 「難しいことじゃなく当たり前のことを当たり前にやりきること。去年も明大には勝ったし、早大にも帝京大にも接戦できた。実力的には慶応はもう日本一に手が届いている。あとは突き抜けるイメージを選手に持たせたい。心技体のすべてが大切だけど、今まで慶応が武器にしてきた心の部分ももっと伸ばさなきゃいけないと思います。

 今年はW杯が11月2日に終わったあと、トップリーグは来年1月まで始まらない。W杯で盛り上がったラグビーへの関心を、大学ラグビーが引き継いでいきたいです!」

<栗原徹(くりはら・とおる)> 1978(昭和53)年8月12日、茨城県潮来市生まれの40歳。清真学園中でラグビーを始める。WTB/FB。現役時代は178センチ、82キロ。清真学園高3時に全国高校大会8強。慶大3年時の1999年度に全国大学選手権優勝。サントリーで2001〜02年度全国社会人大会優勝。07年慶大大学院修士課程修了。翌08年トップイースト(当時)のNTTコムに移籍し、トップリーグ昇格に貢献。慶大4年時の00年に日本代表入りし、03年W杯など27キャップ。通算347得点は日本代表歴代3位。02年7月の台湾戦で樹立した1試合60得点は世界記録。13年度で引退。

◆早慶タッグ!!ワセダOB三井がコーチ 「新しいチャレンジに魅力感じた」

参謀役の三井ヘッドコーチ(右)は早大OBで、昨季の早大コーチ。大胆な人事を敢行

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 異例の転身だ。慶大の三井BKコーチ(34)は早大OB。しかも、この1月までは早大コーチを務めていたのだ。

 「自分は100%ワセダにコミットしていたので、声をかけてもらったときは迷いました。葛藤は大きかった。でも、栗原さんの話を聞くうちにワクワクしてくる自分がいて、新しいチャレンジに魅力を感じました」

 三井コーチは、大阪・啓光学園(現常翔啓光学園)から早大に進み、東芝へ。13年に引退後、東芝で分析担当、BKコーチを歴任した。栗原HCとは東芝時代、日本協会のコーチ研修会で同じ班になり意気投合。17年に東芝を退社後は単身NZへ渡り、コーチングを学んだ。

 「NZへは全くの個人で行ったのですが、いろんな縁や偶然に恵まれて、オタゴ代表やハイランダーズ(スーパーラグビー)の練習やミーティングに入れてもらえた。フミ(パナソニックの日本代表SH田中史朗、当時ハイランダーズ)の人気にも助けられました(笑)」

 学閥も国境も越えたラグビー仲間のつながりを実感したことも、異例の決断を後押ししたようだ。これは新時代のスタンダードになるか?

    ◇

 首都圏のアスリートを全力で応援する「首都スポ」。トーチュウ紙面で連日展開中。

 

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