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【首都スポ】

佐々木元、39歳で狙う24年パリ五輪! BMXフラットランド世界ランカー

2018年10月31日 紙面から

BMXを駆使した妙技を披露する佐々木元=千葉県松戸市で(七森祐也撮影)

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 2024年パリ五輪での正式種目採用が有力視されている自転車競技「BMXフラットランド」で、プロライダーの佐々木元(もと、33)=東京都江戸川区出身=が、39歳での五輪出場を狙っている。今年9月、岡山市で行われた全日本選手権で連覇を果たし、通算10度目の優勝。海外でも2010、11年にNORAカップ(世界年間最優秀選手賞)を連続受賞し、世界ランキング5位につける第一人者だ。 (藤本敏和)

 千葉・松戸市立博物館の前にある、人通りの少ない小さな広場。白く舗装されたスペースで、毎日のようにBMXが舞っている。時にサドルの、時にタイヤの上で一心に自転車を操る佐々木を、世界ランク上位のアスリートだと知る者はほとんどいない。

 「ギャラリーと言えるのは、いつも見に来てくれるおじさん1人ぐらい。あとは一緒に練習している仲間。それぐらいですね」

 BMXに出会ったのは、腰を痛めて硬式テニスを断念せざるを得なくなった東海大浦安高2年のときだった。盗難に遭った通学用自転車の代わりに、ただ見た目に引かれて、BMX風の自転車を購入した。そのすぐ後に、千葉・浦安市内の公園でBMXフラットランドの練習をする男性に行き合った。

 「すごいな、と思って遠くから見ていたら『何か(技を)できる?』と声をかけてくれて。それが、今でも師匠って呼んでいる鈴木孝生さんでした。当時乗っていたのは本格的な技はできない自転車だったんですが、『それでもこういうことならできるよ』って、技を教えてもらって」

 それから、一気にのめりこんだ。すぐに競技用のBMXを入手し、毎日公園に通って技を磨く。自宅から公園へ通う時間すら惜しくなり、公園に寝泊まりした時期まであった。「起きてすぐ自転車乗って、学校行って、終わったらまたすぐ公園に来て、深夜まで乗って、その場で寝て…という生活で。睡眠時間も数時間ぐらい。今思うと異常ですね」と笑った。

 当時はBMXに世界的な大会があり、プロがいることも知らなかった。少しずつうまくなり、技をマスターしていくことがただ楽しかった。

 高校卒業後も、アルバイトをしながら、そんな生活を続けていた。だが2008年、初めて出場した本格的な国際大会(ドイツ・ケルン)で世界トップ選手中予選3位、決勝13位に入賞したことが転機になる。明確に世界一を見据えるようになったのだ。

競技の魅力や経歴を話す佐々木元

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 フラットランドは採点競技。技の難易度、独創性、完成度などが基準となるが、最も点数が高いのが独創性だという。

 そこで最大の武器となっているのがオリジナル技、自身の名を冠した「モト・スピン」。前輪の車軸から突き出たステップに足を掛け、ハンドルやサドルを手に持って高速回転する技だ。

 世界と戦うために開発したテクニックが、まず評価されたのはインターネットだった。2010年にユーチューブへ動画をアップすると、一気に世界中のフラットランド界の話題をさらった。大会でも実績を残し、10年に選手間投票で決まるNORA杯を獲得。翌11年にも同杯を手にして、誰もが認める世界的な選手となった。

 実は、この時期まで飲食店でアルバイトしながら選手生活を送っていた。「NORA杯の表彰式に出て、でっかいトロフィー抱えて日本に帰ってきたら、誰も僕のことを知らない。恥ずかしくなっちゃって。これじゃダメだと思って、積極的にスポンサーを募ったり、ショーに出演したりして競技を広めながら、自転車だけで生活するようになりました」

 ただ、NORA杯で頂点を極めた後は、大会への意欲が少し衰えていたという。「僕らの世界では、引退した後も自分が作った技は残る。そうやって技を残すことに、大会で成績を残すよりも重点を置くようになっていました」

 その意識を変えたのが五輪だ。フラットランドが最も盛んなのはフランス。24年パリ五輪で正式種目に採用される可能性が高いと見られている。「実はもう今から6年後を見ていて、6年かけて完成する技に取り組んでいます。BMX人生の集大成にしたい」。技の開発から五輪制覇へとギアを切り替えていくつもりだ。

 この競技は選手生命が非常に長い。現在、世界ランク2位のアレックス・ジュメリン(フランス)は40歳で、3位のホルヘ・ゴメス(スペイン)は37歳。佐々木は24年に39歳で、十分に射程圏内だ。24年のスポーツの祭典を目指し、日本の第一人者はきょうもBMXを駆っている。

<佐々木元(ささき・もと)> 1985(昭和60)年5月5日生まれ、33歳。東京都江戸川区出身、千葉県松戸市在住。173センチ、62キロ。東海大浦安高出。2006年に全日本選手権初優勝、世界年間最優秀選手賞NORA杯を10、11年と連続受賞。競技のかたわら、年間数十回のショー出演をこなす。家族は妻・友美さん(32)と今夏誕生した長男・蒼(あお)くん。

<BMXフラットランド> 平らな舗装面やステージなど、「平地」を使って行うBMX種目。「自転車を相手にダンスする」と評され、さまざまなスピンやタイヤを足で直接けっての急停止やジャンプなどでテクニックを競う。世界の頂点を争うワールドシリーズでは1演技3分、3人のジャッジによる採点で順位が決まる。

 BMXには他に2008年北京五輪から採用された「レース」、東京五輪から正式種目となる「フリースタイル・パーク」「ストリート」がある。レースは起伏に富んだ未舗装路で順位を争う。パークはジャンプ台を活用した空中技の採点競技で、ストリートは手すりなどを利用したトリック走行などの採点競技。

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