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【ラグビー】

「サモアの誇りとプライドを見た」おとこ気スクラム…松島劇的トライの裏にラム主将の選択[W杯コラム]

2019年10月8日 18時23分

試合後、スタンドの観客に向かって一礼する日本とサモアの両フィフティーン

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タッチに出せば試合終了だが…

 ラグビーW杯の日本―サモア戦。4年に一度、世界一を決める舞台ならではの妙味があった。

 後半のロスタイムに、12点差を追うサモアの主将が自陣ゴール前でスクラムを選んだ場面だ。この判断は試合後の酒席でも話題に上り、旧知の先輩ライターは「あのキャプテン、おとこ気がありそうだもんな」と振り返った。

 試合終了間際、日本はボーナスポイントの4トライ目を狙い、敵陣ゴール前のラインアウトからモールを押し込んだ。前に動きだすとバックスの選手も加勢し、13人の巨大な塊をつくった。それでもゴールラインを越えられなかった。

 レフェリーの笛が鳴る。敵軍投入のスクラムで再開した直後、試合終了を告げる銅鑼(どら)が鳴った。無情にも日本はスクラムで反則を取られ、フリーキックを与えてしまった。

 万事休す。

 記者席でそう思った。サモアチームにも、タッチキックで試合を終わらせようとジェスチャーで示す選手がいた。しかしナンバー8、ジャック・ラム主将は試合を、W杯を諦めていなかった。19―31。トライを取ればボーナスポイントを得る7点差以内の敗戦。1次リーグ突破にわずかな望みを残す。ラム主将はスクラムを選択した。

 「日本のスクラムにそれほど圧力を感じていなかった。いけると思った。バックスにトライを取るチャンスを与えようと考えた」

試合終了間際のスクラム

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心意気受け止めスコットランド戦へ

 このスクラムの攻防を日本は制した。最後はナンバー8姫野のサイド攻撃から、ベテランのSH田中が絶妙な(受け手が内にも外にも走れる)パスを放ち、WTB松島がインゴールに飛び込んだ。ボーナスポイントを呼び込む値千金のトライに、観客は熱狂した。

 国の威信を懸け、意地と意地がこれでもかとぶつかり合う。その瞬間、瞬間に全てを出し尽くす。それがW杯だ。ラム主将は掛け値なしの勝負をスクラムに託し、はるか100メートル先のインゴールを目指した。スーパーラグビーやトップリーグならタッチにボールを蹴り出して、はい、おしまい、となっていたかもしれない。

 サモア戦から一夜明けた会見で、藤井強化委員長は記者からの質問を受ける前に言った。

 「最後、サモアの国の誇りとプライドを見たという感じで、たまたまこっちが1ポイントを取ることができたので、それを無駄にしないよう、しっかり胸に刻んで次に挑みたい」

 スコットランドは9日のロシア戦でボーナスポイントを意識せざるを得なくなった。日本はサモアの心意気を受け止め、史上初のベスト8進出を懸けて13日のスコットランド戦に臨む。(末松茂永)

 

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