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【ラグビー】

取り締まりが厳しすぎるラグビーW杯 退場者続出で接戦が減ってしまっては…[田村一博コラム]

2019年10月7日 20時41分

5日のイングランド戦で退場処分を受け、うつむくアルゼンチンのラバニーニ(左)。マテラ主将も険しい表情だ(AP)

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 ラグビーは性善説の上に成り立っているのではなかったのか。

 このスポーツの競技規則は「ロウ(Law)ブック」と呼ばれる。ルール(規則)によって取り締まるのではなく、行動規範に沿って自己規制を促す。ロウを守ろうとするのが前提だからこそ、「故意」の反則には、直接失点につながる重い罰則(ペナルティー)が科せられる。そんな人間味が魅力なのに、多くの人が見つめる今W杯で、取り締まりの姿勢があらわになって残念だ。

 開幕から2週間がすぎ、準々決勝への進出権争いが激化している。負けた時点で上への道を断たれるチームもあるから、必死さは試合前の国歌斉唱時から伝わる。

 5日のアルゼンチンがそうだった。初戦でフランスに惜敗し、この日のイングランドに敗れれば、状況が苦しくなる。立ち上がりから目がつり上がっていた。その中で、ロックのラバニーニが前半17分に退場となった。相手の主将、CTBファレルへのタックルが、頭部へダメージを与えたと判断された。映像で接触シーンを繰り返し見て、ラバニーニの肩が頭を直撃していると確認。判断基準に照らし合わせ、200センチの大男に退場を示す赤色の紙を突き付けた。

 場内から大ブーイングが起きた。チャレンジする側が1人少なくなると、勝負のてんびんは大きく傾く。決して安くない入場券を購入したファンは「チケット代返せ」の心境になっただろう。

 それ以上に、映像を見て「故意でない」と確信した人がほとんどだったから、不満の声が爆発した。ファレル(188センチ)は、接触の瞬間に少し体を沈めた。だから不運にも、タックラーの肩が直撃。タックルをした側、された側の両者に望まぬ事故に見えた。

 世界ラグビーの統括団体「ワールドラグビー」は、世界中の人が見つめる舞台で、ラグビーは安全重視のスポーツとアピールしたい。その強い意向が、大会のレフェリングに大きな影響を与えているのは明白だ。しかしその影響で、退場者が続出。7日現在、1次リーグの途中ながら史上最多の5人に達した。この結果は、統括団体の求めるものとは真逆のものではないのか。戦力のバランスが崩れ、接戦も減っている。

 いくら取り締まりを強化しようが、危険なプレーの抑止力にはならない。それは、反則となるプレーを誰も故意にやっていないことの裏返しだ。統括団体は、ラグビーの魅力として、あらためてそこを強調すべきだ。

 どれだけ反則をしない準備を重ねようと、必死の攻防の中には不可抗力の結果もある。それを両チームが潔く認める。そして罰せられた者は、自分の頭上を超えていくペナルティゴールを見つめながら反省する。はい、それでおしまい。

 ダメージを受けたチームの選手、ファンを含め、ラグビーの世界では人数の多い側が当たり前に勝つ試合なんて誰も見たくない。(ラグビーマガジン編集長)

 

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