トップ > 中日スポーツ > 芸能・社会 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

【芸能・社会】

海蔵亮太の「愛のカタチ」 慰問コンサートで歌い続ける

2019年11月26日 紙面から

「愛のカタチ」を歌唱する海蔵亮太

写真

 病院や介護施設を回る歌い人がいる−。第61回日本レコード大賞の新人賞に選ばれた歌手の海蔵亮太(29)だ。5月から約半年間で13回の慰問コンサートを重ねた。11月はテレビ出演もあり、全国から30件以上のオファーが届くなど活動の広がりを見せている。看護師や介護士らがつけた愛称は「ホスピタルプリンス」「泣き歌王子」。今月、千葉県松戸市の介護付き有料老人ホーム「SOMPOケア ラヴィーレ東松戸」で行われたコンサートを目撃した。

◆祖父の死きっかけ

 強く、深く、染みた。両手をぎゅっと握る。入居者だけでなく、職員も涙の粒をこぼしながらうなずき、震える口を手で抑えた。デビュー曲「愛のカタチ」が会場と心に響いた。半年前とは明らかに違う歌声がそこにはあった。東京、埼玉、千葉、三重…。13回慰問コンサートに足を運んだ。

 「学び、変化していっている」

 認知症をテーマにした曲。子ども、自身の名前さえ忘れても、妻の名だけは覚えていたという実話が元になっている。海蔵も4月に亡くなった認知症の祖父を重ねた。お見舞いに行った時、「『お兄ちゃん、どこから来たの?』って言われたり、九州男児だったのに人前で泣いたり…。それでもおばあちゃんのことは忘れなかった」。祖父母と同世代の“観客”に優しい声で夫婦の絆を語った。

 祖父の死をきっかけに5月から「病院に音楽を」と活動を開始。訪問することは「楽しみだった」というが、当初は「愛のカタチ」を歌唱することに戸惑いがあった。「(認知症の)当事者や家族が聴くこともある。どう思うのか。本当に歌っていいのかという葛藤はあった」。だが、患者の家族から掛けられたひと言に背中を押された。

 「すごくよかったです。ぜひ、続けてください」

◆自然と泣けてくる

 心の霧は晴れた。カラオケ世界大会で2年連続王者に輝いた技巧に魂が宿った。そして、甘い笑顔が加わる。介護士から「ホスピタルプリンス」を略して「ホスプリ」と呼ばれるようになった。心の衣を丁寧に一枚一枚はがして素肌に届く、温かい歌声。この日、乾いた涙の跡を残す女性職員は「自然と泣けてくる。家族について深く考えさせられる」とこぼした。施設の広報担当者も「こんな光景を見たのは初めて」と驚いた。

 慰問コンサートで忘れられない出会いもあった。脳の障害で短期記憶を喪失する若い女性から「きょうの記憶はなくなってしまうけど、この感動だけは伝えたかった」と告げられた。だから、“証拠”写真を一緒に撮ったという。この日のコンサート後も188センチの体を折り、手を握り、話を聞き、記念撮影する姿があった。

◆今を一緒に楽しむ

 病院、介護施設へと一歩踏み出し、重いテーマと向き合った。記憶を失うことは誰にも止められない−。でも「何か残せるもの」はあると信じる。たくましい年輪を刻んだ海蔵は言う。「今を一緒に楽しみたい」。共有する一瞬を大切に思い、塗り重ねた。だからか。その歌声は強く、深く、胸の奥まで染みる。

<海蔵亮太(かいぞう・りょうた)> 1990(平成2)年8月8日生まれ、名古屋市出身。小、中、高校とバスケットボール部の主将を務め身長188センチ。中京大法学部を卒業後、食品会社に就職するが歌手を目指し2016年に退社し、デビュー。カラオケ世界大会で同年に男性部門、17年にデュエット部門で優勝を飾る。中日OBの立浪和義さんのファン。

入居者に囲まれ、笑顔をみせる海蔵亮太(中)

写真
 

この記事を印刷する

PR情報

閉じる
中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日スポーツ購読案内 東京中日スポーツ購読案内 中日スポーツ購読案内 東京中日スポーツ購読案内 中日新聞フォトサービス 東京中日スポーツ