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【ドラニュース】

あなたはこのプレーをジャッジできるか…プロ野球審判員というお仕事 “正しくて当たり前”人がやる味わい

2020年1月28日 12時12分

(左)巨人戦の1回裏1死一、二塁、石川の打球をフェンス際でジャンプして捕球しようとする伊藤康 (右)直接捕球したかに見えたが、フェンスに当たった後の捕球と判定され、すぐさま内野へ返球して一塁走者の二塁封殺に成功した=2019年4月30日、東京ドームで

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【月刊ドラゴンズ2月号・渋谷真記者コラム】

 さてクイズです。無死一塁。走者がスタートを切り、打者は遊撃にゴロを打ちました。二塁送球も間一髪セーフ。二塁手の一塁送球は大きくそれて、カメラマン席に…。審判はもちろんボールデッドを宣告し、一時試合を止めました。どのような状況で試合は再開されるでしょうか?

 正解を書く前に、昨年末にNPBがリリースした「ファインジャッジ賞」をお伝えする。「審判員の技術の向上を目的に、優れた判定をたたえ、表彰する制度」で、以下の4審判員が選ばれた。

 牧田匡平(3月29日の日本ハム―オリックス戦=札幌ドーム=の球審。開幕戦という緊張感があるなか、非常に難しい本塁でのクロスプレーを最適な位置で見極めた)

 嶋田哲也(4月21日の阪神―巨人戦、甲子園)

 村山太朗(4月30日の巨人―中日戦、東京ドーム)

 福家英登(7月30日の阪神―中日戦、甲子園)

 中日がらみの2つを紹介する。平成最後の試合で、村山審判員は三塁塁審を務めた。1回、1死一、二塁。いきなり1点を失った大野雄は、なおもピンチだった。石川慎吾が左中間に大飛球。この試合がプロ初出場だった伊藤康祐が懸命に追う。フェンス際でジャンプ。グラブには収めた。直接捕球ならもちろんアウト。フェンスに当たった球を捕ったのならインプレー。このときの思いを、僕は改めて聞いた。祈りながら目で追った大野雄は「どっちか見えませんでした」と言った。当事者の伊藤康ですら「無我夢中で僕もわからなかったんです。京田さんが『こっちに投げろ』って手を挙げていたから、とにかくボールを返しました」と確証はなかった。では京田は見えていたのかと問うと「いえ、実は僕も判断できませんでした」。これほど微妙な打球を村山審判は正しく見極め、即座に「ノーキャッチ」と判定していた。

 ちなみにボールは伊藤康から京田を経て二塁ベースカバーの阿部寿樹へと渡り、捕られたと判断して帰塁した一塁走者の岡本和真はフォースアウトで、記録上は「左翼ゴロ」。ここを1点で踏ん張れたおかげで平成を勝利で終えることができたのだ。伊藤康の美技と村山審判員のまさしく「ファインジャッジ」だった。

 福家審判は球審だった。6回、無死二塁。打者の梅野隆太郎は送りバントを試みたが、小飛球となった。捕手の木下拓哉と交錯。野球ファンならご承知のように、原則としては走塁より守備優先だが、捕手周りだけはどちらにも優先権はなく、互いのプレーをするだけだ。だから木下拓は「僕はとにかく捕りにいった。結果として梅野の足を踏んづけちゃったのは覚えています。梅野は(判定に対して)怒っていましたねえ」。梅野が走ろうとしていなかったことを故意の妨害と判断したのだが、NPBの選出理由によると「その後の監督への説明、場内放送を的確に行った」ことも評価されたようだ。

 さて、冒頭のクイズの正解は「一塁走者は生還。打者走者は二塁に進み、無死二塁で再開」である。多くの人は「無死二、三塁」と思うだろうし、実際に審判団も危うくそうするところだった。悪送球でのボールデッドには2つの進塁が与えられるのだが、問題は「悪送球」がいつ行われたのかという判断だ。それは投げた選手(この場合は二塁手)の手から離れた瞬間。つまり、一塁走者はすでに二塁に達しており、打者走者は一塁に達していない。そこから2つ進塁すると「1点入ってなお無死二塁」が正解となる。

 誤っていれば表彰どころかけん責もの。それを救った嶋田審判員は、実は当日は「控え」だった。同僚の判断に「待った」をかけた「勇気あるアドバイス」に、異例ながら控え審判の選出となった。

 ちなみにこの4月21日は中日―ヤクルト戦(ナゴヤドーム)で、あの「よそ見ジャッジ事件」が起こった日でもある。かなりの制裁を受けているのでここで蒸し返すのは避けるが、審判員が同日に2つの失態を犯すところだった。審判員は「正しくやって当たり前」。失敗ばかりがクローズアップされる職業だが、MLBのように「ロボット審判」(2020年以降、段階的に導入)なんて味気ない。ぜひ今シーズンも生身の人間の「ファインジャッジ」を楽しみにしたい。

阪神戦の6回無死二塁、打者梅野(右)が送りバントで捕手木下拓(中)と交錯。守備妨害の判定を下す福家球審=2019年7月30日、甲子園球場で

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