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【ドラニュース】

【龍の背に乗って】野球の神様は笠原に再び投げさせた

2019年8月5日 紙面から

ヤクルト戦に先発し3イニング5失点で2敗目を喫した笠原(中嶋大撮影)

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 打たれたのは残念だが、笠原がマウンドで投げていることには重い意味がある。彼が不整脈により戦列を離れ、カテーテル手術を受けたこと。引退の危機に直面していたこと。それなりに報道されているこの2点が、結び付かない読者も多いと思う。どうして不整脈で引退する可能性があったのかを書く。

 脈が通常より速くなる頻脈性だった。医師から精密検査を勧められたが、問題は治るか治らないかではなく、異常を起こす場所が心臓のどこなのかという点にあった。心臓は左右の心房と心室に4分割されるが、運命の分かれ道は「心房(上室性)」か「心室(心室性)」か。「心房」なら高周波電流で異常部分を焼き切るアブレーション治療により現役続行。「心室」ならトップアスリートとしては活動できない。実際の症例数はわからないが、笠原にすれば2分の1の話である。球団トレーナーに言わせれば「天と地の差」を、笠原が知ったのは手術の数日前。医師からのインフォームドコンセント(十分な説明と同意)を夫妻で受けた。

 「はい。わかっていました。心室だと体内に小型のAED(正しくはICD。植え込み型除細動器)を埋め込む必要があるからだと。(部分麻酔で)意識は鮮明だったので、手術が終わって『心房だった』という(医師の)声が、はっきり聞こえたんです」

 最終的にはカテーテルを通してようやく「上室性」だと確定した。その報告を受けた瞬間、チームの医療スタッフは腰が抜けたようにへたり込んでいた。念のために確認したが、ICDを埋め込んだ状態で現役を続けることも、術前のように埋め込まずにプレーすることも「選択肢としてあり得ない」そうだ。

 彼はマウンドに生還した。笠原という投手は、野球の神様に生かされたのだ。2分の1を乗り越えた野球人生で、ファンに感動を与えてほしい。僕の言葉にうなずいた彼の顔には、試練を克服した人間の強さが宿っていた。

 (渋谷真)

 

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