トップ > 中日スポーツ > ドラゴンズ > ドラニュース一覧 > 8月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【ドラニュース】

【龍の背に乗って】藤浪に送られた温かい拍手の意味

2019年8月2日 紙面から

1回表2死満塁、堂上を空振り三振に仕留める藤浪

写真

 降板する藤浪に、甲子園のファンは温かい拍手を送っていた。5回、1死。1点しか失わなかったが、8四死球を与えた。褒められる内容ではなかったはずなのに…。阪神ファンでなくても、藤浪がどんな投手かは広く知られている。軽く投げても150キロを超すポテンシャルと、その球を制御できないテクニカル。とりわけ右打者へのすっぽ抜けが死球になることが多く、2月の対戦に続いてこの日も木下拓に2打席連続でぶつけた。

 甲子園春夏連覇の実績を引っ提げ、ドラフト1位で入団した。ルーキーイヤーから3年連続で2桁勝利を挙げた。順風満帆の野球人生が、4年目から逆風に変わった。故障ではないことは、本人にとって救いであると同時に苦しみでもあったはずだ。当たるのも怖いが、実は当てるのも怖い。フォームを整え、2軍戦で結果を積み上げても制球力が身に付かない。彼のそんな苦闘を知っているから、拍手が生まれたのかもしれない。

 ある球界関係者から、藤浪という男を物語る話を聞いた。チームメートとこんな話題になった。「100億円をもらえたら、野球をやめるか?」。僕たちサラリーマンなら「宝くじに当たったら、会社やめる?」。プロ野球選手だからゼロが増えるだけで、他愛のない話である。チームメートはみんな「やめる」と即答したが、藤浪だけは「やめませんよ」と答えたそうだ。

 「だって僕、お金のために野球やってませんもん。楽しいですから」

 空気を読み、周囲に話を合わせようとしない強さ。結果が出ないつらさに負けない忍耐力。自分の中に「こう投げたい」というフォームが見えている。その作業ははかどっていないはずなのに、彼には「楽しい」と思えている。人ではなく自分。天から与えられた大排気量エンジンを制御できるシステムが、いつの日か完成する−。四死球をもらって勝つのではなく、最高の球を打ち返す。この日、彼に拍手を送ったファンに、そんな試合を見せねばならない。

 (渋谷真)

 

この記事を印刷する

PR情報

閉じる
中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日スポーツ購読案内 東京中日スポーツ購読案内 中日スポーツ購読案内 東京中日スポーツ購読案内 中日新聞フォトサービス 東京中日スポーツ