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【Penペン草紙】

「フジヤマのトビウオ」から継承される競泳ニッポンの魂 古橋広之進と北島康介が交錯するドラマ

2019年10月11日 18時0分

2009年1月、文化勲章を受章した古橋広之進さん(左から2人目)と夫人の恵子さん(同3人目)は、北島康介さん、岩崎恭子さんから花束を受け取った

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 半世紀前に海を渡り、敗戦国日本の誇りを取り戻した6人の若者がいた。「僕はこれをね、アマゾンで1冊やっと探したんですよ」。日大水泳部の上野広治監督は、誇らしげにその一部始終が書かれた報告書を見せた。

 1949年の全米選手権に招待された日本選手たちが記したもので、題名は「使命を果(はた)して−渡米選手の手記」。中でも古橋広之進の活躍は目覚ましく、400メートル自由形などで次々と世界記録を樹立。「フジヤマのトビウオ」と世界中で大絶賛された。

 メンバーの1人、橋爪四郎さん(91)から実際に話を聞いた上野監督は、「その時は(占領下で)パスポートがないんだって。マッカーサーの文書一つで、向こうに行って。もう帰ってこれないんじゃないかというくらいの気持ちだったと…」と代弁する。現地での視線も厳しく、「ジャップ」とさげすまれて唾もはかれたという。

 現役時代に古橋から教えを受けた上野監督は、恩師の心中に思いをはせる。「背負っているものが今と全然違う。戦争で負けた日本が、スポーツでアメリカに勝つ。国民に与える影響力はすごいものだったと思うよ」

 現在放送中のNHK大河ドラマ「いだてん」で古橋役として出演する北島康介さんは、最初は大役に戸惑った。相談を受けた上野監督は、「僕は『いいんじゃないの』と。そしたら北島本人から『だったら日大プールで撮影させてくれ』と」と明かした。そんな裏話もあって古橋の母校・日大でロケが行われた。

 焦土に希望を与えた古橋。その姿を表現するために、北京、アテネ五輪の金メダリストが見せたこだわり。2人の思いが交錯したとき、どんなドラマが生み出されるのか。今から放送が楽しみだ。(平野梓)

 

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