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【コラム 人生流し打ち】

大野雄大ノーノー、ベンチは「みんな見て見ぬふり」 近藤真一の場合は真逆…やはり野球は心理のスポーツだ

2019年9月14日 18時42分

ノーヒットノーランを達成し、ナインに祝福される大野雄(中央左)

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 中日の大野雄大投手が14日の阪神戦(ナゴヤドーム)でノーヒットノーランを達成した。本拠地球場でこの快記録を成し遂げた中日の投手は過去3人しかいない。ナゴヤドームに詰め掛けた中日ファンは実に幸せな瞬間に立ち会えたわけだ。

 ファンはワクワク。で、ベンチはどうなのか? 大野によると「みんな、見て見ぬふりだった」そうだ。余計なプレッシャーを与え、記録が途切れたら大変だという心理が働くからだろう。記者の間でも、過去の記録を調べ始めると途絶える、というジンクスがある。やっぱり、気を使う。

プロ野球史上初、プロ入り初登板の巨人戦でノーヒットノーランを達成した近藤真一

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 しかし、例外があった。1987年8月9日の巨人戦。デビュー戦で記録を達成した近藤真一のケースである。けしかけた男がベンチにいた。現在2軍コーチの石井昭男さんである。初回を3人で抑えると「あと8回だ」。2回も抑えると「あと7回だ」とささやき続けた。

 もちろんこの時点で記録を狙わせたわけでなく、気持ちの張りを持続させようとしただけだった。しかし、5回が終わって6―0。勝利投手の権利を手にした瞬間、態度が変わった。

 「よ〜し、まだヒットを打たれていないから頑張れ!」と明らかに意識させるコメントをはいたのだ。向こうっ気の強い近藤をその気にさせ、大きく育てようという先輩の親心でもあった。その時、近藤はこう思ったという。

 「打たれたって、鹿島さん、郭さんが後ろにいる。2点とか僅差だったら緊張しすぎたでしょうけど、それを聞いて、よし狙ってやろうか、と思いました」

 そして9回になるとベンチは「行け、行け」「狙え、狙え」の大合唱になったそうだ。最後は篠塚を見逃し三振に仕留めてゲームセット。奇跡はお祭り騒ぎの中でフィナーレを迎えたのだった。

 当時、近藤の持ち球はストレートとカーブだけ。それでも強打の巨人を抑えた。その陰には、首を振るサインを交えながら見事にリードした捕手の大石がいた。励まし続けた控え外野手の石井がいた。

 「あの日、あの時でなければノーヒットノーランは達成できなかったでしょうね」。先輩への感謝を近藤は口にした。

 野球は科学であると同時に、心理のスポーツでもある。

 

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