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【コラム 人生流し打ち】

昔は分かりやすかった「反社会勢力」 私も中日・近藤真一と新幹線のグリーン車で…

2019年6月26日 17時25分

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 反社会勢力への闇営業をめぐり吉本興業が宮迫博之ら11人のタレントを謹慎処分にした。「丁寧に」再調査を行った結果だそうだが、何ともお粗末。ただ、最近はどこに反社会勢力がいるか分かりづらくなっており、教訓にもなる事件でもある。

 筆者が初めてその筋と遭遇したのは1987年のシーズンオフ。大阪駅から中日の近藤真一投手と新幹線に乗った。「グリーン車で(名古屋に)帰ろう」という言葉にのっかったのが運の尽きだった。乗り込んだ車内には20人を超える黒服の一団。しかも我々の席は回転させられ、2人の足が乗っかっている。

 他の車両に移る手もあったが、そうすればグリーン代が飛ぶだけでなく「アイツはえらそうなことを書くが本当はビビリだ」と選手の間でウワサになるおそれがある。筆者は意を決して「よろしいですか」と足をどけてもらい、着座したのである。

 左胸には銀色のバッジ。沈黙を破ったのは左側の男だった。しばらくしてから「おまえ、近藤やないか」と声をかけたのである。ノーヒットノーランで顔は知れ渡っている。

 プロ野球の話をそつなく交わしているうちに、男は突然切り出した。「わしらな、一晩で億ちゅうカネを動かしとるんやで」「おまえ、スポーツ新聞の予想なんかあてになるか。先発は全部わかっとるんや」ときた。まさかの野球賭博告白である。

 当時、予告先発制度はなく、野球賭博の最重要情報はハンディを決める先発投手だった。どこまでが彼らのハッタリかは分からなかったが、このころの反社会勢力は威力誇示型がほとんどで、人相風体からして分かりやすかった。

 時代は変わり、今は手口も巧妙化。カネ、オンナがらみだけでなく、いい人だと思って付き合っていたら元組員だったという例も実際にあった。知らなかったではすまされない。新入団選手の研修だけでなく球界全体で気を引き締める必要があるだろう。

 さて、話は新幹線の旅に戻る。目の前の2人を含む黒服は京都で降り、我々はひと息ついた。「いやあ、びっくりしましたね」「野球賭博だもんなあ」。油断して大声で話していたら、まだ数人の黒服が残っており、名古屋で一緒に降りるはめになった。あれ、近藤投手は? 降車したところで出迎えの黒服と話をしている。聞くとこうだ。

 「『お疲れさまです』と言われたので、ぼくは違いますと答えたら、『何が違うんや』とすごまれました」

 近藤さん、申し訳なかった。あの時は本気で笑ってしまいました。(増田護)

 

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