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多胎育児の支援 切望 双子や三つ子 母親ら休めず過酷

サークル「tatai fam」に集まった双子を育てる親ら=富山市で

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専門家「悩み共有の場や補助必要」

 愛知県豊田市で2018年、母親が三つ子の次男を死なせた虐待死事件以降、双子や三つ子を育てる多胎育児の辛労に改めて目が向けられている。母親らが休めない過酷さに対して支援を打ち出す自治体がある一方、富山県内ではごく一部にすぎず、拡充を求める声が上がる。(山岸弓華)

 「あすはわが身」。女児の双子(2つ)と男児(3つ)を育てる富山市の看護師中沢智恵さん(35)は豊田市の事件に触れ、そう打ち明けた。

 双子をだっことおんぶで寝かしつけようとする。疲れて座り込むと、二人が同時に泣きだす。食事も一人がお皿をひっくり返し、片付けたら、また一人がひっくり返す…。睡眠不足が続き、「一歳になるまで記憶がありません」。

 夫が不在のとき、双子の一人が寝てくれず「お願いだから、寝てよ」と、思わず力の入った手でお尻を強くたたいてしまったことがある。子どもが寝た後、われに返り、「子どもを虐待しちゃった」と母親に泣きながら電話した。

 苦しむ母親がいる一方、自治体が開く産前のパパママ教室は多胎を想定していない。家庭訪問する保健師も、多胎育児に明るいわけではない。

 中沢さんは昨年九月、多胎育児をする親が集うサークル「tatai fam」を立ち上げた。月に一、二回ほど集まり、情報共有したり息抜きしたりするのが目的だ。LINE(ライン)も開設し、相談を二十四時間受け付ける。「サークルに参加できないほど、孤立するお母さんにどう手を差し伸べたらいいのか。これからも考えたい」と力を込める。

 親の思いは切実だ。男児の双子(1つ)を育てる富山市の女性(44)は「スーパーでも双子を乗せられるカートがなく、一人を乗せて、もう一人をおんぶする形になって大変。双子用が一個でもあれば違うのに」と訴える。男児の双子(2つ)の母親(30)=同市=は、専門知識を持った保健師の増員を望む。「少し体重が重いから『ミルクを少なくして』と言われても、あげずに一気に二人泣いたら大変。一体どうすれば…」

 黒部市では第三子から贈呈していた出産祝い金を、本年度から双子・三つ子が生まれた家庭にも支給している。市担当者は「多胎児の出産は費用がかかる。金銭面での不安が解消できたら」と説明する。多子世帯への支援はあっても、こうした多胎児家庭を支える政策を打ち出している自治体はごく限られている。

 富山大学術研究部の二川香里准教授(医学系母性看護学)は、自身も小学四年の男女の双子を育てる。「多胎は早産児あるいは低出生児の割合が高い。ふつうの子と比べてしまいがちで、母親の自責の念が強くなってしまう」と危惧する。「悩みを共有できる場や、ベビーシッターの派遣や育児用品購入の補助などの経済的支援や、不安軽減のための産前教育が必要」と話す。

 中沢さんは「双子を妊娠したとき、情報が少なく不安で、手放しでは喜べなかった。多胎育児がつらいだけでなく、幸せなものになるよう、寄り添った支援を」と求めている。

【メモ】愛知県豊田市の虐待死事件=2018年1月、生後11カ月の三つ子の次男を畳にたたきつけ死なせたとして、母親の被告が傷害致死罪に問われた。被告は育児中、寝る時間がほとんどなく、外出も困難で産後うつ病になっていた。名古屋地裁岡崎支部は19年3月、被告に懲役3年6月の実刑判決を言い渡した。多胎家庭の支援団体が「多胎育児の大変さが理解されていない」と減刑を求める署名活動を行う一方、虐待を受けて育った人らが「実刑判決は妥当」と主張する署名を募った。名古屋高裁は9月、「うつ病の影響は限定的」として被告側の控訴を棄却した。

 

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