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クマ呼ぶ柿 放置せぬ 今年の人身被害 ほぼ全現場に実

近隣住民が集まって柿の実を収穫する取り組み=富山市善名で

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富山・善名 高齢者宅へ「出張収穫」

庵谷 80本伐採、目撃ゼロに

 富山県内のツキノワグマによる人身被害が後を絶たない。クマを人里に引き寄せている大きな要因が柿の実。被害が報告されるたび、県などは早期収穫を呼び掛けてきたが浸透せず、未収穫のところにクマが現れ、人を襲う被害が繰り返されている。高齢世帯の庭や所有者不明のものなどさまざまな事情も絡む中、木の持ち主に代わって危険を取り除く取り組みが広まり始めた。(向川原悠吾)

 富山市中番で二十一日、男女三人がクマに襲われて重軽傷を負った被害。現場の目の前に住む寺岡寛美(ひろみ)さん(69)の自宅庭にはたくさんの実がついた柿の木があった。食べごろを待って収穫を先延ばししていたが、近隣住民が被害を受け「こんなことは今までなかった。すぐにでも実を取りたい」と慌てた様子で話した。

 県によると、二十二日時点で県内の人身被害は二十人。統計を取り始めた二〇〇四年の二十四人に次いで二番目に多い。ほぼ全ての現場近くに柿の実があり、県自然保護課の担当者は「注意喚起が浸透していないのは残念」と悔やみ、「行政は人の家のものを勝手に収穫できない。呼び掛けるしかないが、なかなか浸透しない」と続けた。

 被害が相次ぐ中、放置された柿の実や木の撤去を手伝う支援が広がっている。富山市の善名地区では、民生委員が柿の実の残る高齢者宅を訪問し、地域住民と収穫する作業を始めた。デイサービスを利用する西田志真子さん(98)は一人暮らしで足腰が弱く、数年前から収穫を諦めていたが、二十一日に自宅庭にある柿三本の実を全て収穫してもらった。親族は「近くにクマが出て気になっていたのでありがたい」と感謝した。

 立山町では、七十五歳以上の高齢者宅から要望があれば、町職員による木の伐採を二十日からスタート。県内初の取り組みで、今後もクマ出没に備え、年内は要望を受ける予定という。

 クマの生態に詳しい立山カルデラ砂防博物館の白石俊明学芸員はこうした取り組みを評価する。富山市山間部の庵谷地区では十月〜十一月上旬に住民同士が協力し、集落にある八十本近くの柿の木を伐採して以降、クマの目撃情報がない。

 今年に入り、県に寄せられたクマの目撃件数は昨年一年間の百四十九件の六倍近い“大量出没年”。白石さんは「クマを定着させないような環境づくりが効果的。何もしなければ数年後も今年と同じような事態になる」と指摘する。

 富山の一部地域では昔、嫁ぎ先に柿を植えて食べる風習があり、記念樹に近い存在になっている場合もあるというが、白石さんは「思い出や習慣にとらわれず、枝を切るなど身の丈に合った育て方をしてほしい」と話している。

 

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