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生活保護申請拒否 県内でも 「住所なし」理由 違法

ホームレスとなり、富山市役所へ生活保護の申請のために約1週間通い続けた男性=富山市下赤江町で(向川原悠吾撮影)

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支援の弁護士「数年で十数件」

 富山市の生活保護の申請窓口で、住所がないことを理由にホームレスが受理を断られている。生活保護法は住所がなくても受けられると明記しており、こうした対応は以前、首都圏などで問題となった。監督する富山県は各市町村に研修などで説明しており「本当ならばあってはならない」と指摘する。(向川原悠吾)

 富山市下赤江町のアパートに住む無職男性(34)。四月半ばから生活保護を受けているが、それまでは二週間ほど住所がなかった。

 父親を早くに亡くし、大学卒業後は職を転々。家に恋人を連れ込んでいた母親からは厄介者扱いされた。居場所がなくなり二月、市内の寮付きの警備会社で働き始めたものの、「向いていない」と四月に解雇された。

 寮を追い出され、インターネットカフェで一時をしのいだが、体臭がひどくなり入店拒否に。そこで助けを求めたのが生活保護だった。

 初めて窓口を訪れたのは四月五日。掛けられた言葉は「まずは住所を用意してください」だったという。一週間通い続けても対応は変わらなかった。

 見かねた友人が知り合いの弁護士に立ち会ってもらうと「あっさりと通った」といい、「追い返された時は『死ね』って言われたんだと思った」と憤る。

 同じ対応をされたと訴える人は他にも。福岡県出身の男性(44)は昨春、路上生活中に申請したが、住所がないことを理由に断られたと振り返る。同市八尾町出身の六十代男性は「書類すら書かせてくれなかった」と打ち明ける。

 貧困問題に携わる地元の西山貞義弁護士によると、行政の窓口で住所がないことを理由に断られ、支援を求められたのは、ここ数年間で十数人。大半が富山市で、電車賃を渡され別の市町村で申請するようあしらわれた人もいた。「誰でも貧困やホームレスになる可能性はあり、そうした人を前提に考えていないのは貧困を軽視している。一番必要な人が使えない制度では意味がない」と残念がる。

 一方、富山市生活支援課の担当者は「基本的に受給には住居を確保してもらうが、住所がないと申請が受けられないとは言っていない。言葉の行き違いがあると思うが、時には非情になる」と説明する。

県の受給割合 全国最少

識者「相談対応に不慣れ」指摘

 富山県は千人当たりの生活保護受給者が昨年度末、三・五人と全国最少。本紙が各窓口にホームレスが申請に来た際の対応を聞くと、ほぼ全てが「経験がなく、県と相談する」と回答。上市町、立山町、舟橋村を管轄する中部厚生センターの担当者は「住所がないと申請は受けられないと聞いている」と誤った認識を示した。新川厚生センター(入善町、朝日町)と小矢部市は回答がなかった。

 生活困窮者らを長年支援しているNPO法人ほっとプラス(埼玉県)の藤田孝典代表理事は「典型的な水際作戦。十年前に首都圏であったことが富山で起きている。ホームレスが申請した時点で本来は役所が家を探す必要があり、富山のような対応は東京などではまず見られない」と批判する。

 藤田代表理事は「相談を受けたことがあまりなく、対応に慣れていないのでは」としながら、「本人が希望したら受理するという生活保護の原則に沿うよう、準備を整える必要がある」と訴えている。

 

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