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珍入者 追わザル対応を 富山、街中に出没

住宅地を動き回るサル。後ろは新庄中の校舎=13日、富山市常盤台で(住民提供)

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 富山市の街中に出没し、地域に混乱を巻き起こした一匹のサル。騒動三日目の十五日、呉羽丘陵の方向へ走って行く姿を見せたのを最後に、目撃情報は途絶えた。なぜ、サルは現れたのか。私たちは、どう対応すれば良かったのか。(山中正義、山本真士、柘原由紀)

専門家「発情期以外 危険少なく」

 「今は発情期ではない。群れを求める欲望や行動はなく、定着できる良い場所を探しているうちに迷ったのでは」。ニホンザルの生態研究が専門の富山県自然博物園ねいの里(富山市)の赤座久明さん(65)は推測する。

 赤座さんによると、市街地を逃げ回ったのは八歳前後のニホンザルの雄で、体重は一〇〜一五キロほどとみられる。立山連峰から流れる常願寺川を下り、川から約一キロ西の富山市新庄中学校周辺に迷い込んだ可能性がある。

 野生の雌は基本的に一生同じ群れで過ごすが、雄は五、六歳になると繁殖のため生まれ育った群れを離れる「ハナレザル」になる。近親交配を避けるための習性で一生のうちに複数の群れを渡り歩く。発情期は九〜十二月ごろのため、市街地に出没したサルは「生まれ育った群れを出た後に別の群れに入れず、単独行動していたのかもしれない」。

 人に危害を加える可能性は「発情期でなければ危険性は少ない」と赤座さん。野生の雄は群れを守ったり、群れの中で格好付けたりするために威嚇することはある。だが、今回はそうした状況下にはなかった。「悪さをするのは本来の野生のサルではなく、(餌付けなどで人に)野生生活をゆがめられたサル」。赤座さんは違いを強調する。

 しかし、行政や警察の対応は混乱した。十三日に新庄中に現れた後、県警や富山市、市猟友会はサルを懸命に捜索。常願寺川に追い込む作戦も試みたが、失敗した。「住民や警察、マスコミが桁違いに過熱した。サルは追われるから逃げやすい所へ走って行った」。赤座さんは初期対応が裏目に出た可能性を指摘する。

 市街地から出て行く様子を見せない場合、一時的に捕獲して自然に返す方法も選択肢に入る。一つの方法が麻酔銃の使用だ。実際、今年二月には同県魚津市中心街に出没したサルの捕獲は麻酔銃で成功した。

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 ただ、使用にはさまざまな制限が伴う。今回は十四日に二回、富山市の要請で使用が検討されたが、サルが衰弱していなかったため見送られた。「サルに体力が残っていれば、命中しない可能性がある。失敗したら次から警戒されて成功率が下がる」。使用の許認可を担う県自然保護課の小杉知毅・副主幹は判断の背景を説明する。

 周囲の安全確保も重要で、警察の協力で大規模な交通規制を敷かなければならない。小杉副主幹は魚津での捕獲例を「サルがすでに衰弱していたからうまくいった。かなり珍しいケースで奇跡に近い」と例外を強調する。たも網は、「サルの動きが素早く、捕まえられない」と言い切る。

 自然の豊かさが魅力の富山県。ただ、それは野生動物がすぐ隣にすんでいるということ。特に富山市は常願寺川と呉羽丘陵という「二大動物移動ルート」に囲まれており、今後も野生動物が迷い込む可能性がある。赤座さんは「サル一匹ぐらいの一時的な通過は『山にそのうち帰る』ぐらいのおおらかさで見守ってほしい」と呼び掛ける。

 富山県内の野生ニホンザル 富山県自然博物園ねいの里の赤座久明さんの調査では、富山市を流れる神通川以東に生息し、78の群れが確認されている。そのうち里山や平野部にすむ群れは31あり、それぞれ50匹前後から成る。ハナレザルは数百匹いて大多数は森で暮らす。

 

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