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木彫り猫 観光客招く 南砺・井波 瑞泉寺前通り

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 「日本一の木彫りのまち」をうたう富山県南砺市井波地域が、空前の“猫ブーム”に沸いている。中心部の瑞泉寺前通り(八日町通り)に近年、木彫りの猫が置かれだし、今では数十体が町に溶け込む。愛らしい姿や職人の遊び心が好評で、六百年の歴史を誇る門前町の新たな呼び物になっている。(山本真士)

 北陸最大級の寺院・瑞泉寺へと続く緩やかな坂道。道沿いの酒店をふと見れば、木彫りの猫が軒下で寝転がり、手酌をしている。向かいのそば店では、つぶらな瞳の子猫が看板の隙間に。片道二百メートルの通りではこの調子で、あちこちに個性的な猫が隠れている。

商店に隠し置き

 仕掛けたのは、通りの彫刻師でつくる瑞泉寺前彫刻部会。元々、別の町おこし団体が、木彫りの猫二体を最寄りの駐車場に置いていた。しかし、休憩所に隠したのが裏目に出て、注目度は低かった。「猫ブームに乗れていない」。事務局長の野村光雄さん(56)の提案で、部会が猫の数を増やし、商店に置くことにした。

 井波彫刻は寺社彫刻や欄間、獅子頭で名をはせる。十二支でない猫は特殊なモチーフだった。商店主から「本当に作れるのか」と心配されたが、二〇一六年、役員が試験的に四体を制作した。「意外と面白いな」。乗り気になった部会員たちは翌年、隠し場所の意外性や猫の習性の再現にこだわった九体を追加した。

 チラシの制作や猫探しの催し開催でPRすると、風向きが変わった。瑞泉寺を見学するだけで帰ってしまう観光客が多かった通りで「八割くらいの方が猫を探すようになった」(野村さん)。団体ツアーで仕掛けを知り、子どもや孫を連れて再訪する人まで現れた。

 部会は勢いそのままに一八年、さらに十三体を追加した。公式な“隠れ猫”は全部で二十六体。彫刻師が遊びで作ったり、商店が独自に置いたりした“隠れ隠れ猫”も含めれば、総数は三十、四十へと膨らむ。

 商店への貢献は大きい。一部の猫は店内に置いているため、店ののれんをくぐる観光客が目に見えて増え、店員との会話が生まれるように。商店主でつくる「瑞泉寺前商盛会」の会長、清都英雄さん(48)は「猫たちは文字通り『招き猫』になった」と好影響を喜ぶ。

土産品も開発中

 猫はさらに増える可能性がある。部会は、瑞泉寺に参拝する「お参り猫」や、気軽に触れる「なで猫」の設置を計画中。井波彫刻により親しんでもらおうと、猫にまつわる土産品の開発にも取り組んでいる。

 商店主の高齢化が進み、空き店舗の増加が懸念されていた中での町おこしの成功。野村さんは「長年さまざまな企画をしてきたが、木彫りの猫が一番の当たりだった」と手応えを語る。依頼があれば、他の地域の町おこしにも、木彫りの技で協力するつもりだ。

◇ ◇

 本日掲載できなかった木彫りの猫の写真は後日、朝刊富山版に掲載します。

 井波彫刻 富山県を代表する伝統工芸。1762年の大火で焼けた瑞泉寺の再建が始まりとされる。職人数は約200人で、彫刻産業としては全国最大級。彫刻を中心とする歴史や文化が2018年、「宮大工の鑿(のみ)一丁から生まれた木彫刻美術館・井波」として日本遺産に認定された。

 

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