トップ > 富山 > 特報とやま > 記事

ここから本文

特報とやま

花粉症“切り札”いつ育つ 富山発祥 無花粉スギ

里山に植えられた「立山森の輝き」の苗木=富山県氷見市触坂で

写真

 富山県内は花粉シーズン真っただ中。平年の二倍以上とされるスギ花粉の飛散が、花粉症の患者を苦しめている。打開策として無花粉スギへの植え替えが進められているが、まだ効果は感じられない。研究や林業の専門家に、現状や見通しを尋ねた。(山本真士)

植え替え面積 まだ0.18%

 スギ花粉はどこから来ているのか。県森林研究所(立山町)の図子光太郎・森林資源課長は「富山は花粉の“自家消費”が特徴。県内の山沿いに分布する人工林から飛来し、県外からの流入は一部」と指摘する。

 花粉を飛ばすスギの標高は高くても千メートル。立山・室堂(二、四五〇メートル)では花粉が観測されず、「立山が県外からの流入を防いでいる」という説もある。花粉症の有病率は調査によってばらつきがあるが、四人に一人程度は発症しているとみられる。全国平均より少ないものの、数十万人が苦しんでいる計算になる。

 切り札として期待されるのが、富山発の優良無花粉スギ「立山 森の輝き」だ。県が旗振り役となって、二〇一二年度から植栽を開始。今月までに県内の八十二ヘクタールに十六万本以上を植えた。面積で計算すれば、県内のスギの全人工林四万六千ヘクタールのうち0・18%だ。

 県の計画では、苗木の生産量を引き上げ、二六年度までに五百ヘクタールに植える。ただ、それでもスギの全人工林のうち1・09%にすぎない。図子さんは「都市部近くから植えていけば、花粉症の患者は次第に減るでしょう」と予測する。一方で「十年で結果が出るかというと、そうではない」と、対策の長期化を示唆する。

促進へ「県産材使って」

写真

 植え替えに影響するのが林業の好不況だ。県森林政策課によると、県内の人工林は建築用に適した成熟期を迎え、生産量は上昇傾向。近年は現場に高性能な機械が導入され、生産性が上昇している。外国産材の価格上昇や国の制度面での支援も競争を優位にしている。

 ただ、こうした追い風だけで植え替えは進まない。生産者の減少や高齢化が進んでいて、担い手の育成は急務。同課の成田英隆・主幹は「地権者に同意してもらえるかも重要。スギを植えたがらない人もいる」と話す。雪害などに強い個体から高品質な苗木をつくり、信頼性を高めていくことも求められている。

 そうした中、氷見市は県内で最も植え替えが進んでいる。今月までに二十八ヘクタールで植えられ、県内全体の三割強を占める。背景には、地元産のスギ材の人気がある。一二年から「ひみ里山杉」としてブランド化を進め、生産量が拡大。スギを伐採した後の再造林で、無花粉スギが選ばれている。

 植栽から素材生産まで担う県西部森林組合(高岡市)の種部修史・氷見支所長は「花粉を出すからと言って、でたらめにスギを切れない。『使う』があって『切る』『植える』ができる。例えば家を建てる時は、一部でも良いから県産材を使ってほしい」と訴える。

 花粉症の緩和策はマスク着用や薬の服用が一般的。しかし、いずれも根本的な解決からはほど遠い。県内の花粉飛散自体を減らしたければ、県産材を意識して使う。遠回りに思えるが、今はそれが近道のようだ。

 無花粉スギ 花粉を全く出さないスギ。自然界に少数ながら存在する。富山県森林研究所が1992年、富山市内で発見し、全国的に無花粉スギや少花粉スギの開発が本格化した。研究所は初期成長や雪害抵抗に優れた品種を開発し、「立山 森の輝き」の愛称で量産に取り組んでいる。

 

この記事を印刷する

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山
地方選挙

Search | 検索