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さまよえる天神様 小型化、地域で展示 伝承へ新たな試み

奉納者に贈られる小型の天神飾り=富山県高岡市古城の射水神社で

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床の間ない、飾る人いない…

 菅原道真の掛け軸や人形を正月に床の間に飾り、子どもの成長を願う「天神飾り」。富山県内で広く伝わるが、核家族化や住宅事情の変化などで、所有する品々の扱いに困る家庭が増えている。全国的にも珍しい伝統文化を守り、伝えていこうと、時代に合わせた取り組みが本格化している。(小寺香菜子、山本真士)

 天神飾りが片付けられる二十五日、射水神社(高岡市)の授与所に掛け軸や土人形が次々と集まった。神社は二月、受け入れた品の願をほどいて役目を終わらせる「天神さま送り」を初めて実施する。この日集まったのは約五十点。神職は「予想以上の数」と驚く。

 持ち込まれた理由は持ち主の他界が最多だったが、事情はさまざま。土人形を持って来た射水市の七十代男性は「傷みが進み、飾るのも大変なので。この年齢になると、どうしようか悩んでいる人は多い」と打ち明けた。富山市の六十代男性は自身の掛け軸を持参。「息子の分を飾っているので、整理しようと思った。昔は掛け軸を三本掛けられる床の間もあったが、今は床の間も狭いし、二本は掛けられない」と話した。

 神社はこれまで、天神飾りを六月の人形供養で受け入れてきた。しかし、近年は取り扱いに困る家庭からの問い合わせが増加。飾り終えるこの時期、天神飾りに限って受け入れることにした。伝統が途絶えないよう、代替品として小型の人形を渡している。

「天神さま送り」に向けて持ち込まれた天神飾り=富山県高岡市古城の射水神社で

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 家庭に眠る天神飾りを集め、地域振興に役立てる取り組みもある。高岡市の山町筋(やまちょうすじ)で今月開かれた「天神様祭」では、住民の所蔵品や地域外から寄せられた品を約三十軒で展示。「今年は家庭では飾れなかったので、飾ることができてうれしい」という声もあった。

 主催団体事務局長の服部恵子さん(48)は「小杉焼など目新しいものもあり、見に来た人にも、持ち込んだ人にも喜んでもらえた」と手応えを感じていた。

 天神飾りの専門店も、現代の家庭の事情に合わせ、商品を工夫している。人形の愛児堂(富山市)は、小型化を進めた飾りを制作。家に床の間がなくても飾れるように、額入りの道真の日本画も取りそろえる。

 代表の渡武英さん(50)は「天神様は神棚や仏壇と同じ。オブジェではない。損傷や汚れはほとんどが修繕できるので、持ち主が亡くならない限り、手放す必要はない」と語り、伝統が大切にされることを願う。

富山で普及 前田家と関連か

 学問の神様とされる菅原道真をまつる天神信仰は全国各地に存在している。富山県内は、長男が誕生した家に親の実家から人形や掛け軸が贈られ、正月に飾るという点に特徴がある。県西部や富山市で特に盛んとされ、福井県でも同様の風習が伝わっている。

 富山で広まった背景には諸説あり、道真を祖先と称した加賀藩・前田家との関わりが考えられている。売薬商人が福井から伝えたとの説も。石川県では飾りが他の地域に比べて豪華で高価だったため、庶民に普及せずに廃れてしまったと指摘する専門家もいる。

 

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