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撮影可の美術館 広がる SNS拡散 来客増も

人気の展示作品の前で記念撮影をする来館者=富山市の富山県美術館で(山本真士撮影)

写真

慎重論も根強く 著作権、マナー壁に

 作品の写真撮影を認める美術館が増えてきた。「海外では禁止じゃなかったのに」という問い合わせや、会員制交流サイト(SNS)の広がりが影響しているようだ。だが、「撮影解禁」が主流になるのかというと、そうでもなさそう。美術館における撮影の可否を巡る最近の事情と、禁止の裏側を取材した。(山本真士、寺田結、関俊彦)

 直立するシロクマの彫刻と並んで、「カシャッ」。ジャガーの彫刻の前で手を広げて、「カシャッ」。

 富山市の富山県美術館で開催中の企画展「三沢厚彦ANIMALS IN TOYAMA」。展示品の半分ほどを撮影でき、SNSへの投稿もOKだ。

 昨年十一月から、来館者の要望に応える形で、企画展の一部の撮影を解禁するようになった。担当者は「宣伝として利用しているつもりはない」と言いつつ、「SNSで広まり、予想外に来場が多かった企画展もある」と、一定の集客効果を認める。

 八月から常設展の一部の撮影を解禁した石川県輪島漆芸美術館は、最大の狙いは「SNSの発信による来館者増」と説明する。「時代の流れに乗るにはSNSは不可欠。撮影は所蔵品をしっかりと見てもらうきっかけにもなる」と学芸員。

 ただし、撮影の解禁を、美術館の一存で決められない事情もある。著作権の問題だ。文化庁著作権課によると、撮影は「複製」に当たり、日本では原則、作者の死後五十年まで著作権がある。作品を売買しても、著作権は別に譲渡契約を結ばないと移転しない。つまり、作品の撮影を認めるかは、作者や著作権者の判断次第ということだ。

 欧米の有名美術館が「撮影可」なのは、古い作品が多いからでもある。フランスのルーブル美術館では「モナリザ」を撮影できるが、作者は約五百年前に亡くなったレオナルド・ダビンチ。英国のナショナルギャラリー、米国のメトロポリタン美術館なども常設展の撮影を認めている。

 撮影を禁止する理由として、少なくない美術館が挙げたのがマナーの問題だ。富山県美術館は「シャッター音が周囲の迷惑になる場合がある。じっくり見てほしい展示空間もある」と全面解禁には慎重な姿勢だ。

 原則、展示室内で撮影を認めない富山市ガラス美術館の担当者は「撮影に夢中になると足元に注意がいかず、作品にぶつかる恐れがある」と説明する。静かな環境で芸術鑑賞をしたい人の中には、撮影禁止の維持を求める人もいるだろう。

 では、今後の流れはどうなるのか。神戸大大学院の宮下規久朗教授(美術史)は「もっと開放すべきだ。写真を後で見返したら、また美術館に行きたくなる。長い目で見ればファンが増える」とメリットを強調し、自撮り棒や禁止のストロボを使うなどマナーの問題にも「鑑賞文化が成熟すれば、そういう人は少なくなる」と指摘した。

「禁止」源流は仏像?

 これまで日本の美術館で「撮影禁止」が主流だったことに、何か理由があるのか。美術関係者への取材を進めると、寺社が仏像や仏具を貸し出す際に撮影禁止の条件を付け、多くの美術館が従って慣習化したという「説」を耳にした。

 東京都の練馬区立美術館などで学芸員を長年務めた金沢美術工芸大大学院専任教授の横山勝彦さん(芸術学)は「ありそうな話ではある」と言う。撮影を認めると、二次使用にからむ問題も生じうる。「仏像は撮影が大変で、長く撮影を手掛けてきた写真家や印刷会社などが独占している。写真を使った印刷物やグッズにも関わってくる」とも話した。 (押川恵理子)

 

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