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黒部ルート 24年度にも開放 欅平駅〜ダム 建設用輸送路 

黒部ルートの開放に合意し、協定書を交わす石井隆一富山県知事(右)と関電の岩根茂樹社長=17日、東京都内で(山中正義撮影)

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 黒部ダムと黒部峡谷鉄道の終点・欅平(けやきだいら)駅を結ぶ関西電力の輸送路「黒部ルート」が、二〇二四年度にも旅客向けに開放される。富山県と関電が十七日に協定を結んだ。関電が約五年で安全対策工事を行い、県は旅行商品を企画。最大で年間一万人を受け入れる。立山黒部アルペンルートにつながり、電源開発の歴史をたどる新たな観光周遊ルートが生まれる。(山中正義、酒井翔平、山本真士、林啓太)

県と関電合意 観光年間1万人

 「長年の夢の実現に向けた大きな一歩」。都内で富山県と関電が開いた協定締結式。石井隆一知事は感慨深そうな表情を浮かべた。関電の岩根茂樹社長は「たくさんの人に黒部の地を体感してほしい」と歩調を合わせた。

 黒部ルートは黒部ダムの建設のために整備された。トロッコ電車やエレベーター、ケーブルカー、バスなどを乗り継ぎ、延長約十八キロの地下道を進む。吉村昭さんが小説「高熱隧道(ずいどう)」で描いた難工事の現場や、中島みゆきさんが〇二年のNHK紅白歌合戦で「地上の星」を歌ったトンネルなどが見どころだ。

 関電は黒部ルートで、年間約二千人を受け入れる公募見学会や、年間約三千人を招く社客向けの見学会を開いてきた。「貴重な産業観光ルート」として誘客に生かしたい県は、「竣工(しゅんこう)後は公衆の利用に供する」という建設時の条件に基づいて開放を求めてきたが、関電は「安全対策が必要」と難色を示してきた。

「高熱隧道」などを走る電車=2017年6月、富山県黒部市内で

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 しかし、黒部ルートを含めた立山黒部の「世界ブランド化」を推し進める県に関電が理解を示し、協議は決着した。安全対策工事費の負担割合が焦点だったが、関電がすべて負担する形に。関電は「経済メリットはない」としながらも、発電事業への理解促進や、地域貢献、社員の安全確保といった利点を強調した。

 開放が実現すれば、見学の利便性は大きく高まるとみられる。無料だった見学費は有料になるが、平日のみだった開催は土日、祝日にも設定される。一九年度は七〜九月に土日祝日のうち四日間で行う。アルペンルートで富山側から入って黒部ダムを見学し、黒部ルートから宇奈月温泉に出て宿泊するような周遊ツアーも企画可能になる。

 富山県内の観光関係者からは期待の声が上がる。黒部・宇奈月温泉観光局(黒部市)の担当者は「自然や電源開発の歴史を一度に知れることで、観光地としての魅力が増すのでは」。アルペンルートを運行する立山黒部貫光(富山市)の担当者は、アルペンルートの利用者が増えるという見方を示し「歓迎したい」と語った。

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 アルペンルートのもう一つの玄関口となる長野県側も盛り上がる。大町市観光協会の小松令子専務理事は黒部ダムに近い立地の良さを指摘。「宇奈月との間に観光客の流れが生まれるのでは」と話した。

 北陸経済研究所の藤沢和弘・調査研究部長は「年間一万人の受け入れ人数は多くはないが、それを逆手に取れば、プレミアム感を演出できる。周遊は長時間になるので、地元での宿泊につながる」と指摘した。

 課題もある。整備から半世紀を超えた黒部ルートは老朽化している。公募見学会は約二十年間、無事故で続いてきたが、社客を含めた受け入れ人数が二倍になる開放後は、より充実した安全対策が求められる。

 関電の月山将常務は取材に黒部ルートは素掘りに近く、落盤は頻繁に起きていると明かし「対策工事は責任を持って進める」と気を引き締めた。

 

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