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深掘りTOYAMA(BBT連動企画)

わずか数日で発酵 魚醤新時代 射水・片口屋「鰤醤」人気

かくはん装置付きの発酵器で速醸法による鰤醤造りに臨む片口敏昭専務=富山県射水市の片口屋で

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うま味たっぷり でも塩分控えめ

 魚介やそのあらを発酵させる伝統調味料の魚醤(ぎょしょう)。北陸でも各地で造られるが発酵に数カ月以上の長期間を要し、独特の臭いが苦手な人も多い。それをわずか数日で発酵させて臭いも少なくする新技術「速醸法」が実用化され、最近ではブリやメギスなど従来の魚醤になかった原料の商品も続々登場。製造過程で出た残りかすが高機能の飼料や肥料として有用との研究データも出るなど、新時代の魚醤が各業界から注目されている。製造の現場を訪ねた。

 一八三〇(天保元)年創業の歴史を持つ富山県射水市のしょうゆ・みそ製造「片口屋」。その一角に最新の機器類が並んでいる。毎分三千回転の遠心分離機や、かくはん装置付き発酵器などから生み出されるのが、富山湾のブリの内臓を原料にした魚醤「鰤醤(ぶりしょう)」だ。

 片口敏昭専務(60)が製造作業を見せてくれた。

 同県氷見市の鮮魚店で仕入れたブリの内臓を発酵器に入れ、五五度で温めながら三日間かくはんする。伝統製法だとたっぷり入れる塩は一切使わないが十分に発酵。加熱滅菌してから遠心分離機にかければ魚醤の原液が出来上がる。これをろ過すれば鰤醤の完成。保存のための塩を加えるが伝統魚醤に比べれば塩分濃度はかなり低いという。

 「富山と言えばブリ。そのうま味がたっぷり入っているし塩分も控えめ」と片口専務。二〇一三年、発酵技術の講演会で福井県食品加工研究所の宇多川隆・特別研究員(当時は福井県立大副学長)から「富山ならブリの魚醤を造ればいい」と勧められ教えられたのが速醸法。一四年十二月に発売した鰤醤は百二十ミリリットル入りで既に八千本も売れた。

 速醸法の開発者でもある宇多川氏は元味の素発酵技術研究所長。福井県立大教授となっていた〇九年、高温で分解するタンパク質の性質を活用して速醸法を確立した。「伝統魚醤は雑菌を増やさないため塩を入れるが発酵が遅くなる。高温にすれば菌が増えずに急速発酵する」。その最適温度が五五度と突き止めた。

 思わぬ効果も明らかに。福井県食品加工研究所が無塩段階の魚醤原液を植物に散布すると花つきがよくなり、防虫効果を裏付ける結果も。同県畜産試験場が原液をろ過した残りかすを飼料に加えて鶏に与えると、生まれた鶏卵に、何も加えなかった卵に比べて四倍のドコサヘキサエン酸(DHA)が含まれていた。

 片口屋は富山県内の養鶏業者と実験を重ねて実用化する計画。初めてメギスの魚醤造りを速醸法で始めた石川県七尾市の「もりやま」も魚の餌に残りかすを使うことなどを検討中。今後さらに展開が広がりそうだ。

 ◇ 

 富山テレビ放送「プライムニュース BBTチャンネル8」(平日午後四時半から)の十二日午後六時台「中島流!深掘りTOYAMA」は、速醸法の魚醤最前線を取り上げ、中日新聞北陸本社の中島健二編集委員が解説します。

 

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