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リニア 協定締結 落としどころ見えず

◆認可5年で副知事

JR東海との対話について語る難波喬司副知事=県庁で(立浪基博撮影)

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 リニア中央新幹線の着工を国が認可し、十七日で五年になる。静岡県とJR東海の協議は南アルプストンネル(静岡市葵区)工事による大井川の流量減少問題を中心に難航し、静岡工区だけ着工されていない。本紙のインタビューに応じた県側の交渉役トップ、難波喬司副知事は着工同意の前提となる基本協定に向け「JRは住民の心配や不安が分かっていない。現状で落としどころは見えず、締結は遠のいた」と述べた。住民の理解を得られる丁寧な説明をJRに求めた。

 JRは二〇一三年、着工により大井川の流量は毎秒二トン減少するとの試算を示した。「命の水」が減ることに流域や県の不安、反発は大きく、JRは一八年十月、「全量を戻す」と約束した。今年八月から十月にかけての県とJRの協議は工事中の一定期間、湧水が他県に流出する問題が主要な争点に浮上した。

 JRの見解では、静岡側から掘る「下り勾配」工法なら湧水は流出しないが、安全性などに難点があり、山梨側から掘る「上り勾配」しか選択肢がない。難波副知事は「経済性、工期、工費、安全性の観点から『上り勾配』を主張するのは鉄道事業者としては当然。われわれは水がものすごく大事だから、できれば『下り勾配』でと言っている」と現状を説明した。

 続けて「(JRには)住民や利水者の不安が解消できるレベルの説明をしてほしい。水か、経済性か、価値の議論になれば、国土交通省から助言があるかもしれない」と述べ、八月の協議から参加した国の仲介に期待を示した。

 JRは今月四日の協議で、湧水の流出は大井川の表流水や地下水の流量減少に直結しないことを強調。「湧水が県外に流出しても、工事のどの段階においても河川流量は減少しない」と断言したが、その根拠を十分に説明しなかった。

 こうした姿勢に、難波副知事は「『減少しない』は明らかに間違っている。協議はそこそこ議論が進んできた印象があったが、そう言われると、一年前に議論が戻る」と批判した。

 二七年のリニア開業を見据え、JRが早期の着工に向け苦心していることには「ちゃんと説明資料を出してくれたらいい」「すべて着工前にやれとは言っていない」などと語り、一定の理解をみせた。

(岸友里)

◆標高1500メートルの非常口に懸念 川勝知事

 南アルプストンネル工事を巡り、川勝平太知事は十五日、標高千五百メートル付近に乗客用の非常口が設けられることに触れ「冬場に外に出されたら凍えてしまう。非常口になっていない」と指摘した。

 台風19号の災害対応で県議から要望を受けた後、報道陣に述べた。知事が自ら報道陣に配った県立大特任助教の論文によると、乗客は緊急時にトンネル内を三キロ歩いて地上に出る必要があり、非常口のあり方をJR東海に見直すよう求めている。

◆難波副知事・一問一答

 リニア中央新幹線の着工が国に認可され、十七日で五年になるのを前に、本紙のインタビューに応じた難波喬司副知事との一問一答は以下の通り。

 −認可から五年、静岡工区はいまだ未着工。

(県とJR東海の)協議が進まない理由は、工事で何が起きるのか、リスクがはっきり分かっていないことがある。もう一つは住民の心配や不安をJRは分かっていない。

 −JRは二〇二七年の開業に影響が出るのではと焦っている。着工のタイムリミットをどう考えるか。

 すぐ着工しないとまずいでしょう。JRはちゃんと説明資料を出してきたらいい。JR東海は一回も建設工事をしたことがない。新線を一本も増設してないから、環境アセスもやったことがない。工事で住民と対話をしたこともない。だから時間がかかる。

 −湧水の県外流出が主要な争点になっている。

 われわれは水がものすごく大事だと思っているから、できるんだったら上から(下り勾配工法で)掘ってください、と。ゼロリスクにしろという話をしているわけじゃない。住民や利水者の不安が解消できるレベルの説明をしてくださいと言っている。まずは(下りか上りか)それぞれの工法で発生する問題の事実を確認する。そこまで行き着いたら、どっちにするか、価値の議論になる。その段階で、国交省から助言があるかもしれない。

 −JRは「着工してみないと分からないこともある」との見解。

 それはその通り。われわれもそういうことは初めから言っている。全て事前にやれとは言っていない。リスク管理で毎秒三トン(の湧水が出たら工事を中断する)という数字があるが、暫定的に認めた。あの辺の地質はものすごく複雑なので、三トン出るのか十トン出るのか分からない。今の技術力では(正確に把握することは)不可能。ただ、もうちょっと細かく分析してもらえませんかとは言っている。

 −協議の着地点は。

 落としどころはある程度、影響の度合いとかが見えていると、じゃあ、まぁそうですかとなる。そこも見えない状態で落としどころはない。JRは今までどういう話し合いがされてきたのかをもう一回、理解するべきだ。

 −知事から地域貢献を求める発言もあった。

 地域に不安を与えるのは間違いない。事業者としてやることはあるんじゃないか。われわれの行政コストはすごいけど、県には何も生まない。これだけの工事をやるのなら、社会的責任として、南アルプスの環境を少しでも良くしましたというようなことがあってもいいんじゃないか。

(聞き手・岸友里)

 

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