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シカ食害で林業苦悩 天竜、対策追い付かず

ヒノキやスギの苗木を植えたばかりの再造林地。シカの侵入を防ぐためネットで囲っている=浜松市天竜区熊で

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◆かさむ費用と手間 捕獲も人手不足

 シカによる林業の被害が近年、深刻になっている。再造林のため植え直した苗木が食べられる事例が県内でも相次ぎ、苗木の保護やシカの捕獲などの対策が追い付かず、関係者を悩ませている。 

 浜松市天竜区熊の標高約六百メートルの山あい。一月に伐採を終えた民有林で、五月から新たなスギやヒノキの苗木の植え込みが進む。背丈三十センチの苗木が植わる二・五ヘクタールの斜面を高さ一・七メートルの防護ネットが囲う。

 天竜森林組合の奥田未来さん(25)は「こうしなければ再造林がままならず、本当に悩ましい」と話す。一カ所を破られても被害を抑えるよう一ヘクタールごとの囲いにしたが、ネットは幅一メートル当たり千円程度かかり、現場の再造林費用の半分をシカ対策が占めた。自治体の補助があっても山林所有者には負担で、木材生産の足かせになっている。

 シカの目撃は日常茶飯事で、再造林の被害は「食い止めても三割。ひどい年にはほぼやられる」という。成長した木も根の樹皮がはがれるため、餌が少ない秋冬に巡回を強化している。組合は今春、一部で苗木を一本ずつネットで囲う対策も試したが、費用に加え膨大な手間に悩まされた。

 県内では二〇一七年度、東京ドーム十九個分に当たる九十ヘクタール(民有林のみ)でシカの被害があり、県が統計を取り始めた一九八五年の四ヘクタールから大幅に増えた。

 頭数の把握は難しく、県内でも被害が目立っていた伊豆・富士地域での調査では、二〇一七年度に五万一千頭余と推計された。保護のため県内では〇四年度まで猟期に雌の捕獲が許可されず、温暖化で越冬しやすくなったことなどが増加の要因という。県内では一九七〇年代まで数百頭だった捕獲頭数がじわじわ増加。近年の捕獲強化で二〇一七年度は二万三千頭まで伸びたが、依然として個体数は多い水準にあるとみられる。県自然保護課の担当者は「ひとたび増えるとそれ以上捕獲しないといけないが、狩猟者の高齢化や人手不足で苦労している」と話す。

◆全国の森林 2割で被害

 林野庁によると、シカの生息エリアはここ四十年で拡大を続け、野生動物による森林被害の七割超を占める。全国の森林の二割で被害が確認され、地域によって裸になった山肌の土壌が流出するところもある。

 シカは繁殖力が強く、捕獲しないと四〜五年で数が倍増する。国は捕獲に携わる人材の育成、ジビエ(野生鳥獣肉)消費促進などの対策を取る。人手不足で捕獲が難しい地域もあり、情報通信技術(ICT)を活用した遠隔操作によるわなの導入も進めている。

(島将之、写真も)

 

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