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デームスさんが愛したピアノ 浜松で展示

イェルク・デームスさんから譲り受けたワルターピアノを前に語り合う嶋和彦さん(左)と鶴田雅之館長。館内のピアノも半分がデームスさんの集めたものだ=20日、浜松市中区の市楽器博物館で

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 オーストリアを代表するピアニストで楽器収集家としても知られ、今月、九十歳で死去したイェルク・デームスさんが集めたピアノなどの鍵盤楽器約四十台が、浜松市楽器博物館(中区)で展示されている。一九九五年の博物館開館を機に譲り受けた。デームスさんは親日家で、若手演奏家の養成講座で講師を務めるために訪れるなど、「音楽の街」である浜松と縁が深かった。

 博物館では開館を前に、職員たちが世界中の楽器を集めていた。デームスさんとも交渉し、コレクションを買い取ったという。博物館によると、デームスさんが所有した楽器の所蔵数としては国内で最も多いとみられ、ピアノに限っても博物館が所蔵する約六十台の半数を占める。

 開館時から学芸員として勤める前館長の嶋和彦さん(64)は「古い楽器は繊細だが、手入れが行き届いていた」と語る。特に貴重なのが「世界に四十台もない」というオーストリアのワルターピアノ。一八〇八〜一〇年に製造され、ベートーベンら名作曲家が使ったピアノと同じ型式という。

 デームスさんは一九九五年四月に浜松を訪問。博物館の開館記念式典に出席し、「私のコレクションを浜松で展示してもらえるのは大きな喜び」と語った。開館記念の演奏会では、自ら集めた十九世紀のピアノを使い、モーツァルトやシューベルト、シューマンの曲を披露した。嶋さんは「素晴らしかった。今のピアノで出せない、当時の作曲家が理想とした音だった」と振り返る。

 後進の育成にも熱心だった。二〇〇三年に浜松で開かれた国際ピアノアカデミーでは、音楽監督だったピアニストの故中村紘子さんに講師として招かれた。若手ピアニストらを前にバッハの弾き方を教え、演奏を披露した。アカデミーの運営に携わっていた鶴田雅之館長(46)は「物腰やわらかで話し方も優しい。落ち着いた雰囲気をまとっていた」と話す。

 デームスさんの訃報に接し、鶴田館長は「浜松や博物館にゆかりがある方を失い、寂しい」と残念がる。嶋さんは「引き継いでくれた楽器という文化を次の時代に伝えていくのが、私たちの使命だ」と語った。

◆「ウィーンの三羽烏」

イェルク・デームスさん(CDジャケットから)

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 イェルク・デームスさんは一九二八年、オーストリア生まれ。五六年、イタリアのブゾーニ国際ピアノコンクールで優勝し、名が知られるようになった。ベートーベンやシューマンらドイツ音楽の演奏に定評があった。フリードリヒ・グルダ、パウル・バドゥラスコダとともに「ウィーンの三羽烏(がらす)」と呼ばれた。

 日本では昨年末まで毎年のように公演を開き、指揮者の小澤征爾さんと協演したこともある。収集家としてはワルターやブロードウッド、グラーフ(いずれも浜松市楽器博物館に譲渡)をはじめとする十九世紀の貴重な欧米のピアノなどを数多く所有し、これらの楽器に合った作品を演奏した。

(鈴木凜平、大城愛)

 

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