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次世代型電動車いす製造「WHILL」CEO 杉江理さん 世界で「移動革命」

◆安全な環境もつくりたい

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 使いやすさとデザインにこだわった次世代型の電動車いすを製造販売するWHILL(ウィル、横浜市)という会社がある。最高経営責任者(CEO)の杉江理さん(37)=浜松市出身=は故郷の「やらまいか精神」を支えに、二〇一〇年から製作に取り組んできた。海を越えて米国や欧州などでも高い評価を受ける中、車いす利用者が安心して移動できる環境づくりにも挑戦する。

 −かっこいい車いすだ。デザインへのこだわりは。

 私たちは「パーソナルモビリティー」と呼んでいる。まず、いすという印象を与えないように心掛けた。本来、いすは座るもので動かない。いすが動くから不自然に見える。何かを運転しているように見えることが重要で、いすの部分は黒くし、白色のアームが一番目立つようにした。

 −機能の特徴は。

 二十四個のタイヤを組み合わせて一つの前輪のタイヤを作っている。その場で回転でき、小回りが利く。キャスターのように前輪がくるくる回転する従来の手動車いすに比べ、固定されているので安定もしている。遠隔操作のほか、速度を見ることもできる。

 −国際的に権威のあるデザイン賞を受けるなど海外でも評価が高い。

 欧州、北米、中東、環太平洋地域で展開している。「これが私の人生を変えた」と言ってくれる利用者がいるので、うれしい。米アップルの発表会を見た時に、登壇者がWHILLを使ってくれていて驚いた。

 −開発のきっかけは。

 創業メンバーは友人の集まりで、ものを作って遊んでいた。その中の一つとして一〇年にWHILLプロジェクトが始まった。相模原市のリハビリテーションセンターを訪れた際、車いす生活で百メートル先のコンビニに行くのを諦めているという方に会い、「もうちょっとかっこいいもの、外に出て行ける機能があればいいな」と聞いたのがきっかけだ。

 −創業時の苦労は。

 試作機を製作し、一一年の東京モーターショーに出品した。反響が大きく、「量産しよう」と翌年に会社を設立したが、お金がないと造れないので大変だった。最初は米国、次に日本の投資家から資金調達ができ、一四年発表の初号機にこぎつけた。

 −社名のWHILLに込めた願いは。

 英語で車輪を意味する「wheel」と、未来や意志の「will」の造語。「未来の意志の車輪」ということで、創業メンバーの内藤淳平CDO(最高開発責任者)が考えた。創業当時から「全ての人の移動を楽しくスマートにする」という使命で取り組んでいる。

 −最近はどのような事業を。

 十一月に羽田空港で自動運転の実証実験を行った。近距離タクシーのイメージだ。手動車いすを押す人が必要なくなり、利用者が一人で動ける方がいい。海外の空港でも進めていて、今後は病院やショッピングセンター、テーマパークなど一キロ圏内で動き回る場所が対象になってくる。

 −車いす利用者が楽しくスマートに移動できるには何が必要か。

 車いすが安全に走れるような環境やサービス、仕組みがあまりないのが現状。それをつくっていきたい。例えば、駅員さんの補助なしで電車に乗れるとか、エレベーターと連携するとか。今後は製品と環境がどんどんつながっていくことが重要だと思う。

 −出身地の浜松への思いは。

 やらまいか精神に尽きる。小さい頃から周りの大人たちが「やらまいか」と言って、自然と培われたのかもしれない。

(聞き手・山田晃史)

 すぎえ・さとし 1982年、浜松市生まれ。浜松湖東高、立命館大、東京コミュニケーションアート専門学校を卒業後、日産自動車に入社。2009年に日産を退職し、中国で日本語教師、その後ラオスやボリビア、ウズベキスタンを放浪後に帰国。10年にWHILLの製作を始め、12年に創業。15年度に初号機がグッドデザイン大賞に選ばれたほか、18年には2号機が世界的権威のあるレッド・ドット・デザイン賞の最優秀賞に輝いた。

 

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