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「おんな城主 直虎」脚本家 森下佳子さん 物語で現実照らす

◆棚田の復活 うれしい

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 戦国時代の遠江国・井伊谷(浜松市北区引佐町)の領主、井伊直虎を主人公に二〇一七年に放送されたNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」。脚本を手掛けた森下佳子さん(48)は、地元でもなじみの薄い人物の物語を、遠州の産業や伝承を交えながら生き生きと描いた。ドラマに端を発した取り組みもあり、物語は今も紡がれている。

 −主人公の井伊直虎は、地元でも知られていない存在だった。

 全然知らない人物だった。直虎自身の年表はほとんどすかすかなんですが、今川家に従っていたり、親戚に徳川家康の奥さんがいたり、周辺にわりとネタがあった。今川の方でこの時期に何をしたという記録が残っているので、影響していったらどうなるかを考えて、直虎側の話として起こし直した感じですね。一四年の半ばから年表を埋める作業を始めて、放送一年前から一年八カ月ぐらい脚本を書いてました。

 −どんな物語にしたかったのか。

 「弱者の物語だ」とプロデューサーが話して、「そうだよね」って。ちょうどトランプさんが米国大統領に当選したり、改憲の論議やそれによるデモが行われたりしていた。「日本はこれから生き延びていかなきゃ」という時にやることになった。

「おんな城主 直虎」の台本を手にする森下佳子さん=東京都内で

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 井伊って弱者だし、戦も強くないし、お金もないから軍備もできない。外交で生き残っていくしかない。「互いのメリットを取りつつ、でも、できるだけ戦を起こさぬように」という彼女のセオリーが、現実を照射する形になれば良いなと思った。

 わりと切羽詰まった気持ちでやりましたね。最近でも「北方領土を戦争で取り戻すしかない」という発言をされた議員さんがいましたが、ロシアと戦争して勝てるわけがないと思うのですが…。本気でおっしゃったならば、その現実感覚のなさは怖いと思います。

 −浜松の印象は?

 決まってから書き始めるまでの間に一度、龍潭寺や井伊家発祥の井戸、浜名湖に行きました。浜松駅にグランドピアノが置いてあるでしょ。出迎えてもらっている気持ちになりました。実は実家が昔、ピアノ教室で河合楽器さんのピアノを使ってたんです。その縁で小さい時に毎年、浜名湖にある保養所を使わせてもらっていたんです。

 −地元で語り継がれる「竜宮小僧」はこっそり村人の農作業を手伝ってくれる存在。ドラマにも登場し、直虎の生き方を照らすよう描かれた。

 そこの地域で生まれた伝説というのは、そこの地域性があると思うんですよね。誰かがやってくれたというのが土地柄というか。伝説を知って、直虎が目指すべき領主像としてはそうなんだろうなと取り入れました。

 −幼稚園で竜宮小僧の紙芝居を読むなど人助けの精神を伝える「竜宮小僧プロジェクト」をはじめ、ドラマをきっかけとした動きがある。

 ドラマを機に(久留女木の)棚田が復活して今も保全していると聞いています。お米がおいしかったから私も会員になっています。地元静岡で今川義元を再評価する動きが出てきているのもうれしかった。数字(視聴率)としてはきらびやかな結果を残した番組ではなかったけど、見てくださっている人はきちっと見てくださって、今でもずっと動きが続いているのはありがたいですね。

 −脚本を書く上で大切にしていることは。醍醐味(だいごみ)は。

 「これをクリアしたら絶対当たる」というものではなく、感覚的なものを探り探りやる中で、脚本家とプロデューサーのどちらかが不満足な状態で出すのは絶対に良くないと思ってやっています。自分が机の上で書いたせりふが現実の音声として流れてシーンになるのは、脚本家しか得られない喜びじゃないですかね。壮大な夢をずっと見せてもらっています。

(聞き手・飯田樹与)

 もりした・よしこ 2000年にドラマ「平成夫婦茶碗」で脚本家デビュー。主な作品に「世界の中心で、愛をさけぶ」「JIN−仁−」など。14年にNHK連続テレビ小説「ごちそうさん」で、優れた脚本家に贈られる第32回向田邦子賞を受賞した。地下アイドルとファンの交流を描いたドラマ「だから私は推しました」(NHK)が7月から土曜深夜に放映され、今月14日に最終回を迎えた。大阪府高槻市出身。

 

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