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極め人

絵本作家 宮西達也さん 思いやる心 大事

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 「おまえうまそうだな」に始まるティラノサウルスシリーズで知られる三島市在住の絵本作家、宮西達也さん(62)。シリーズ十五冊は国内外で累計一千万部に達している。毎月のように新刊が出て、国内外での講演も年間百本を超える。超多忙な中、三嶋大社の近くにギャラリーを設けた。伝えたいのは「人として当たり前のこと」。

−「ティラノ−」シリーズは「強くて傲慢(ごうまん)」なティラノサウルスが力の弱い草食恐竜の赤ちゃんなどと出会い、力より大切なことを知りますね。

 完全な人っていないでしょ。誰にもティラノみたいな面がある。でも助言してくれる人や優しい人に出会って優しい心、思いやりの心に触れたとき、その人を認めて聞く耳を持ち「おれ、いけなかったな」とどれだけ立ち返られるか。僕はそれが一番大事だと思ってるんです。一方で自分だけが正しく相手が悪いって思うのもおかしいよね。自分だけが正義って本当にそうかなと、これも立ち返る心がないと独裁になる。

 −絵本を通して一番伝えたいのは。

 当たり前のことです。人に優しくするとか、思いやりを持つとか、愛を持つとか、一生懸命やるとか。今当たり前じゃないことが世間を覆ってる。不正やごまかし。政治家がうそをついたり、不正な手口で医大に入れようとしたり。大人は見本にならないといけないのに。偉そうなこと言って行動は全然違う。

「子どもから大人まで笑ったり感動したり楽しめる。こんなすごい本はない」と話す絵本作家の宮西達也さん=三島市のタツズ・ギャラリーで

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 「ティラノ−」では愛を描いているけれど、それも当たり前のこと。肉食と草食は決して交われないけれど、そんな相手をどこまで思いやれるか。嫌な人だと思っても助けてあげようと思う。それが愛だと思う。

 −なぜ絵本作家に。

 幼いころから絵が好きで小学生で絵を仕事にすると決めた。大学卒業後にデザイン会社に就職したけれど、絵を描きたいと辞めたころ、学生時代のバイト先で経験した絵本作りの楽しさを思い出した。一年出版社を回ってやっと出版できた絵本を、書店で小さい子がニコニコして見ている姿に絵本を描いていこうと決めたんです。子どもから大人まで笑ったり感動したり楽しめる。こんなすごい本はない。短い文章で言いたいことを伝え、想像させることがいっぱいある。生まれ変わっても絵本作家になりたいです。

◆母に感謝 情熱消えず

 −気持ちが揺るがなかったのはなぜ。

 すごい悪ガキだったんです。叱られない日はないくらい。母は「一緒に死のうと何度も思った」と。それでも「健康が一番」「人に優しく」「あいさつしろ」と言い続け、「絵が上手だね」「走るのが速いね」「友だちとすぐ仲良くなれるね」と褒めてくれた。駄目なオレでもできるんだって自分を信じられた。絵本がずっと売れなくても情熱が消えず、あきらめなかったのは自分を信じられたから。母がずっと褒めてくれたおかげです。

 −地元への思いは。

 僕は今感じることと子ども時代に心に残ったものを日記のように描いている。沼津、清水町で感性豊かな人間にしてもらった。そして十年前から暮らす三島も大好き。だからこそこれだけのものが描けた。作家としてピークの今、東京じゃなく三島にギャラリーを開くのは、「あの宮西さんって、こんなに近くにいる人なんだ」「夢ってつかめるものなんだ」と地元の子どもたちに思ってもらいたいから。あのころの僕のように夢を持ってほしい。ギャラリーを開けているとき、僕は必ずいます。来てください。

(聞き手・野村由美子)

 みやにし・たつや 1956年12月、熱海市で生まれ、沼津市での生活を経て小学1年の途中に清水町に移る。日本大三島高校、日本大芸術学部美術学科卒業。27歳で絵本作家デビュー。「おとうさんはウルトラマン」「シニガミさん」など著書多数。「ティラノ−」シリーズで3作目となるアニメ映画も来年公開予定。2009年に東京から三島市に拠点を移し、17年、同市内に原画やジオラマなどを置く「TATSU’S GALLERY(タツズ・ギャラリー)」を開く。

 

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