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極め人

アフガニスタン出身の医師 レシャード・カレッドさん 島田から祖国支援

◆現地診療所 55万人利用

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 一九七九年のソ連侵攻以来、大国に翻弄(ほんろう)され、出口の見えない戦乱状態が続くアフガニスタン。近年は報道も減り、国際社会の関心は薄れる一方だ。島田市の開業医、レシャード・カレッドさん(68)は、そんな祖国を思い、静岡から医療、教育支援を続けている。「日本では当たり前の平和な暮らしができない人たちが、いまだに世界にいることを忘れないでほしい」と訴える。

 −アフガンの現状は。

 反政府勢力タリバンの活動が活発化する一方で政府は統治能力に欠け、厳しい治安状況が続いている。この三年間でアフガン軍は二万八千人が死亡。一般市民はその何倍も犠牲になっている。雨が降らず、干ばつが起きて数万人の避難民が発生し、子ども、産婦の死亡率も依然として高い。

 −復興支援団体「カレーズの会」を設立した。

 二〇〇一年の米中枢同時テロの後、米軍のアフガン空爆が始まり、日本で関心が高まった。あちこちで講演する中、静岡で「何かできることはないか」と言ってくれる有志がいて、じゃあ一緒にやろうと〇二年に発足した。カレーズは現地語で「地下水脈」「命の水脈」という意味です。

 当初は十年もすれば役割を終えるだろうと思っていましたが、ニーズは増える一方。開設した現地の診療所では五十五万七千人の患者を診療。何時間もかけて遠くから歩いてくる人がいます。驚きとともに腹立たしさも感じます。支援は危険と隣り合わせですが、必要としている人たちがいる。やめるわけにはいきません。

 −国際社会への期待は。

 アフガンは国際社会に振り回されてきました。破壊された国の立て直しは国際社会の責任。一般市民が生活できるすべをつくってほしい。いまは悪循環。治安が悪いから国際社会の支援が減る。支援がないから貧しくなり、不満と不安で反政府勢力が拡大し、治安が悪くなる。日本は、これまで戦争に関わっていない国として信頼が高い。第三者的な立場で、政府と反政府勢力とを仲介する役割を期待します。

 −来日して五十年。

 小学校三年生のころ、近所で伏せっていた結核のお年寄りに寄り添い、励ます医師の姿に感銘。医師になろうと思いました。

 フランス留学の選択肢もありましたが、敗戦から一九六四年に五輪を開催するまで復興した日本に興味があり留学先に選びました。千葉大に留学したころ、下宿先の老夫婦が下宿代や食事代を受け取ろうとしなかった。理由を聞くと、戦後に旧満州から引き揚げる際、現地の女性にかくまわれて助かった時のお返しなんだ、と。「これこそ日本の心だ」と思いましたね。

 −島田市で開業した。

 帰国すれば軍に入らないといけなかった。家族ができたこともあり、日本で生きることを決めました。島田市民病院に七年間勤めた縁で、当時の患者さんから島田に戻ってきてほしいと頼まれて、医院を開業しました。静岡は温暖な気候で、人々も温厚。大変親しみやすい土地です。

 −静岡の人たちに訴えたいことは。

 アフガンの報道は減っていますが、何が起きているのかを知らないと次に行けない。関心を持ち続けてほしい。安心して暮らし、子どもを生み育て、安心してこの世を去って行ける。そんな「当たり前」ができない国があることを知ってほしい。

(聞き手・古池康司)

 レシャード・カレッド 1950年、アフガニスタン南部カンダハル生まれ。69年に来日し、千葉大を経て76年、京都大医学部卒。87年に日本国籍取得。島田市民病院、松江赤十字病院などを経て、93年に島田市で医院を開いた。2002年に発足したカレーズの会の理事長に。18年、外務大臣表彰を受けた。

 

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