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ハイパーカミオカンデプロジェクトリーダー 塩沢真人教授 「陽子崩壊」追って

◆「大きなことを考えろ」

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 宇宙を満たす素粒子ニュートリノの研究で二度のノーベル物理学賞に輝いた東京大宇宙線研究所などでつくるグループが、初代カミオカンデから数えて三代目の観測装置・ハイパーカミオカンデの建設計画を進めている。プロジェクトリーダーで同研究所の塩沢真人教授(50)=藤枝市出身=は、「良い成果が出る装置を造りたい」と意気込む。

 −目標の一つに、世界初の「陽子(ようし)崩壊」発見がある。

 すべてのものは原子からできている。原子をつくる陽子が壊れることは、すべての原子はいつか壊れ、永遠ではないということ。宇宙の終わりだけでなく、始まりを理解する法則になる。有望な理論で予言されているが、崩壊を見つける実験装置を造れるかどうかだ。大きな目標で、ノーベル賞級という言葉は大げさでないと思う。

 −今後の取り組みは。

 二〇二〇年春の建設開始を目指してグループの態勢を強化する。参加は十七カ国の三百人近くで、さらに海外の研究者との協力を進める。岐阜県飛騨市の神岡鉱山の坑口からトンネルを掘るため、電気を引くなど着工に向けて準備も間に合わせるようにする。実験はやってみないと分からないが、成果が出ると信じる人たちが参加している。実験開始は二七年を目指している。成果が出せるのはその後。まだまだ長い。

「ノーベル賞受賞者から『大きなことを考えろ』と常に伝えられてきた」と話す塩沢真人教授=千葉県柏市の東京大宇宙線研究所で

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 −研究ではセンサーの光電子増倍管を開発する浜松ホトニクス(浜松市)の貢献もある。

 光電子増倍管の性能向上は大きい。浜ホトとは定期的に打ち合わせし、協力して開発を進めている。欲しい物を誠実に造ってくれる会社であり、組織として尊敬している。

 −ノーベル賞を受けた先生らから学んだことは。

 東大に来てカミオカンデのグループに入った。実験のやり方も知らない中、戸塚洋二さん(富士市出身)、梶田隆章さんに一から教わった。大きなことを考えろ、と常に伝えられてきたように思う。小柴昌俊先生のころからその思想があって、カミオカンデができ、超新星爆発のニュートリノ発見という大きな成果に結び付いた。

 −出身は藤枝東高校だった。研究の道に入ったきっかけと魅力は。

 高校時代は上級生の中山雅史さんが高校サッカーの冬の選手権に出て、国立競技場にバスでみんなと応援に行った。理系だったが、量子力学に興味を持ったのが浪人中の予備校の授業だった。さっぱり分からなくて、大学の理学部にいけばもっと量子力学を勉強できるよ、と言われたのが決定的だった。いまだ理解した気にならない。数学が入ると難しくみえるが、興味があるのは本当にシンプル。物が何でできているか、それが知りたい。

(聞き手・島将之)

 しおざわ・まさと 1968年、藤枝市生まれ。藤枝東高卒、京大理学部卒。東大大学院に進みスーパーカミオカンデ実験に参加。専門は素粒子物理学。2014年から現職。

 <ニュートリノ> 電気を帯びない中性の素粒子。太陽から地上に飛来するだけで1平方センチ当たり毎秒660億個だが、ほかの物質とほとんど反応せず観測が極めて難しい。すべてをすり抜け地球に届き、観測できれば星の内部や宇宙で起きた事象を探る手掛かりになる。

 <カミオカンデ> 飛来したニュートリノがまれにタンク内の水と衝突した際、発生する光を感知し、量や形からエネルギーや種類を分析する。3代目ハイパーは直径74メートル、深さ60メートルの円筒形で、2代目スーパーの5倍超の26万トンの超純水で水槽の内部を満たす。建設費は約675億円。スーパーが10年かかるデータを1年で集められる。

 

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