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あのとき、それから しずおか平成史

B級グルメ(番外編) 「ご当地グルメ」識者

◆地元の宝を再発見

田村秀長野県立大教授

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 平成を彩ったB級グルメは、なぜ人々に愛されたのか。まちおこしに詳しい長野県立大の田村秀教授(56)にひもといてもらった。教授は二〇〇八(平成二十)年に「B級グルメが地方を救う」(集英社新書)を著してから、地域の食文化への愛情を込め「ご当地グルメ」と称している。

 −ご当地グルメが人気になった背景は何か。

 一九八〇年代後半からのバブルで、ドンペリとか高級なものがもてはやされたが、バブルが崩壊し、東京一極集中がいったん収まった。地方にUターンした人たちが、バブルのアンチテーゼのような感じで「地元にも宝ってあるじゃないか」と気付いた。それがご当地グルメだ。九〇年代後半から二〇〇〇年代にかけて光を当てる人が増え、次第に注目を集めるようになった。典型は富士宮やきそばの渡辺英彦さん(二〇一八年十二月死去)だ。

 −コストをかけずに地域を活性化できることに気付いた。

 八〇年代から九〇年代は地方博ブームだった。各地にテーマパークもできたけど、ほぼ壊滅状態。地元に根付いているのが一番なわけですよ。外の人に来てほしいのであれば、地域の人が守ってきたものとか、愛されてきたものをアピールすることだ。食は身近で比較的お金もかからない。

 −ご当地グルメが盛り上がっているのは、インターネットや会員制交流サイト(SNS)の影響もあるのでは。

 通信手段が発達して、自分が体験する「リアリティー感」の価値が上がっている。食は食べてみないと分からない。ご当地グルメは地元の人がふつうに食べているから、そこそこ高くないし、個性があって、見栄えが変わっている。

 静岡(しぞーか)おでんは駄菓子屋で食べる。今の若い人たちは駄菓子屋文化を知らないから新鮮なんですよ。次の世代が食べてくれるから店も維持でき、うまく回ればいいなと思っている。

 −浜松餃子(ギョーザ)は宇都宮餃子と競争して人気を集めた。

 それがいいんですよ。富士宮やきそばも、横手やきそば(秋田県横手市)と太田焼きそば(群馬県太田市)の「三国同麺」があって盛り上がった。このように「横串を刺す」のは大事。「餃子、やきそばでもこんなに違うんだね」となれば「今度行ってみようか」ということになる。

 −それでも、東京一極集中が止まらない。

 地域振興を野球でたとえると、食はクリーンアップでは必ずしもない。食以外でも、地元のものを無理せず大事にしていくことを続けている地域は生き残るのではないか。例えば、伝統的な街並みが保存されている「重要伝統的建造物群保存地区」。国が全国で百十八カ所を選定しているが、静岡県では焼津市花沢の山村集落の一件しかない。

 各地で高層マンションができ、「リトル東京化」している。観光客は、そこに住む人たちのたたずまいを見るわけです。そこをもっと大事にするような政策は必要で、住民が価値を見いだすようになっていかないといけない。

 地方が生き残るにはリトル東京化しないこと。地方の良さを再発見することは引き続き大切でしょう。注目されるための仕掛けが必要で、そうしないと埋没してしまう。

◆東西結ぶ個性派多数

 田村教授は「静岡県は東西の食文化の結節点で、個性的なご当地グルメが多い」と話す。浜松餃子、静岡おでん、富士宮やきそばの他、江戸時代から食べられている袋井市の卵料理「たまごふわふわ」、昭和の味の「もつカレー」(静岡市清水区)、たくあん入りお好み焼き「遠州焼き」(浜松市)などが有名。「みしまコロッケ」(三島市)、「つけナポリタン」(富士市)、「すその水ギョーザ」(裾野市)など、平成に誕生したご当地グルメも人気だ。

(聞き手・菊谷隆文)

 たむら・しげる 1962年生まれ。東大工学部卒。旧自治省に入省。新潟大法学部教授などを経て2018年から現職。専門は地方自治、行政学。

 

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