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あのとき、それから しずおか平成史

B級グルメ(4) 静岡おでん<下>

◆しみる 温かな会話

かき氷、あんみつ、お好み焼きも提供する「ばん」の伴よし子さん(中)。最近、仲間の小島京子さん(右)も店を手伝ってくれる=静岡市駿河区丸子で

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 「静岡(しぞーか)おでんの会」の調べによると、静岡おでんを出す駄菓子屋は静岡市内になお百五十軒ほど残る。

 会の定義では、主に夕方までの営業が駄菓子屋、夜の営業が居酒屋。子どもが顔を出しやすいか否かもあるだろう。酒を出す、出さないにはこだわらない。

 静岡の子どもたちは皆、駄菓子屋に立ち寄り、おでんをほおばった。初代会長の大石正則さん(70)=現顧問=は一押しの駄菓子屋に、静岡市葵区井川の「じんきち」を挙げる。

 「地元で採れた野菜と、手作りのこんにゃくがいい。何より、具材がよく煮込まれている」

 鈴木幸一さん(71)、仲枝さん(70)夫妻がオクシズ(奥静岡)で営んでいる。南アルプスの「自然の家」を退職し、平成に入って間もない一九九〇(平成二)年に始めた。

 種に関係なく、一本七十円。だし粉はかけず、かつおだしや砂糖などを混ぜた地産みそを付ける。「食材本来の味は薄いから、みそが合う」と鈴木さん。

 厳冬には、収穫間もないこんにゃくや、じゃがいもを薦める。「街中じゃあ味わえない季節感があるから、おいしいよ」

 駿河区丸子の駄菓子屋「ばん」は伴よし子さん(79)が四十二年前に開業し、一人で切り盛り。お好み焼きや焼きそば、かき氷も提供する。

 「まさかこんなブームになるとは」。静岡おでんがテレビで取り上げられ、全国区になった二〇〇〇年代、県外のツーリング客らが訪れるようになった。

 一度ゆでてあくを出し、煮込むことで具材本来のうま味を引き出す。十分に一度、昆布や牛すじでだしをとったつゆを足す。「おでん作りは生まれたての赤ん坊を育てるようなもの」

 魅力なのは味だけではない。

 賤機山(しずはたやま)に鎮座する静岡浅間神社の門前にある老舗「おがわ」(葵区馬場町)は一八年三月から、進路や家族、友人関係などに悩みを抱えた高校生らを受け入れている。接客や皿洗いをすることで、働くことの大変さや、やりがいを学ぶ。

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 おかみの娘、中津川真生子さん(46)は話す。「おでんを通じて、人と人のつながりや温かみを感じてもらえたら」

 静岡市教委によると、市内の小中学校では年に三、四回、給食で静岡おでんを提供する。黒はんぺんや牛すじ、豚モツ、大根など、いかにもの具材。「郷土料理として伝え、地元の食材に関心を持ってもらうこと」を狙っている。

 静岡おでんを出す店は東京に四十軒、大阪に三十軒ある。現地のフリーペーパーなどによると、バンコクの居酒屋でも提供し、台北では一七年に静岡おでんを振る舞うイベントがあった。

 その魅力はどこに。青葉横丁の居酒屋「おばちゃん」(葵区)は、店主の杉浦孝さん(44)が「おばちゃんのいるお店のように気軽に寄ってほしい」と名付けた。カウンターで隣り合わせた客同士が乾杯する姿は日常の風景だ。

 「横丁の狭い空間や駄菓子屋でおばちゃんと話したり、会話が広がっていったりするのがおでんの良さ。静岡の文化としていつまでも根付いていってほしい」

 体も、心もぽかぽかになる。そんな居場所が「しぞーか」にはある。

 

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