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静岡けいざい

車で避難生活 広々快適 スズキ元技術者が開発

◆軽トラ改装発電、貯水OK

快適な避難生活が送れるよう設計された「ワンルームカー」と開発したナミレの中村雅さん=浜松市北区で

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 地震や台風などの災害時に車中で快適な避難生活が送れるようにと、スズキの元エンジニアの男性らが、二人乗りの軽自動車「ワンルームカー」を開発した。生活環境の変化を嫌い避難をためらう人が多いことから「普段の生活空間を移動可能なものに」をコンセプトに設計。「この車で一人でも多くの命を救いたい」と話す。

 開発したのは、スズキで主に変速機の開発に携わった中村雅(ただし)さん(62)と、同じく元スズキ社員の妻奈緒美さん(55)でつくる合同会社ナミレ(浜松市西区)。社名は津波の「ナミ」と、抵抗を意味する「レジスタンス」を合わせた造語だ。

 ワンルームカーは一般的な軽トラックの荷台に、看板などに使われるアルミ樹脂複合板で作ったコンテナ(部屋)を取り付ける。コンテナは高さ約百八十センチ、幅百四十五センチ、奥行き二百二十センチ。重さは三百キロで、軽トラックの最大積載量三百五十キロ内に収まる。

 室内にはキッチン、たんす、靴入れ、ソファ、折り畳み式ベッドなどを備え、「家の生活空間をできる限り再現した」と雅さん。一人が一日二リットルの水を使うと仮定し、二人で五日間生活できる二十リットルの貯水タンクを備えたほか、屋根のソーラーパネルで室内の照明や換気扇、携帯電話の充電程度の電力もまかなえる。

室内にはキッチンやソファ、折り畳み式ベッドなどを備える=浜松市北区で

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 キャンプ好きの二人は、雅さんの定年後にキャンピングカーづくりを計画していた。しかし、各地で震災や風水害が相次ぎ、避難指示が出ても移動せず命を落とす人がいたことを知り、「災害に対応した車を自らの手でつくりたい」と思うようになったという。

 開発に際し、雅さんは二〇一七年一月、東日本大震災の被災地を訪ねた。宮城県石巻市の震災伝承スペース「つなぐ館」では、家族や友人が津波に逃げ遅れて亡くなったという語り部の声に耳を傾けた。この地方に伝わる教えで「津波が来たら構わず逃げろ」を意味する「てんでんこ」について「深く大切な教えだと気づかされた」と、ワンルームカー製作の励みにした。

 通常時はキャンピングカーとしても使える。雅さんは一七年の定年後も嘱託社員として勤務していたスズキを今年八月末で退職。組立工場として県の創業者育成施設、浜松都田インキュベートセンター(北区)を借り、本格的な開発体制を整えた。

 受注生産で、想定価格はコンテナのみで百三十万円から、軽トラック込みで二百万円から。展示車の見学希望はナミレ=電070(2615)2670=へ。

(鈴木啓紀)

 <東日本大震災時の避難状況> 内閣府が2012年に岩手、宮城、福島各県の住民1万1400人に実施したアンケートによると、避難場所への移動手段は車が最も多く、有効回答の52・5%を占めた。「車でないと間に合わないと思った」「家族みんなで避難しようと思った」などが理由に挙がった。一方、車での避難を巡っては、渋滞に巻き込まれたり、津波にのみ込まれたりする危険もあり、地域性を踏まえた慎重な議論が求められている。

 

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