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静岡連載

浜松夜話 第11話 我が輩の辞書には…

ピンクのドアが目印のジョセフィーヌ=浜松市中区田町で

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 ようやく肌寒くなってきた十月末。酒好きのMさんと先輩・K記者とスペイン料理店「エルカミーノ」でパエリアを平らげて二軒目に向かう。近くの浜松市中区田町の「ジョセフィーヌ」。メルヘンな薄ピンクのドアが目印だ。が、見かけや店名ほど怪しくはない。ワインがおいしく飲める店である。

 カウンターの向こうには、ジョセフィーヌ…とは言い難い黒髪のマダム・きょうこさん(年齢、かたくなに非公表)。とにかく立て板に水。われわれが店に入って三十分、のべつ幕なし、お気に入りのウナギ屋についてしゃべり続けている。ただ、口を動かしながらも手元は忙しく丁寧だ。サッカー選手のイニエスタばりの広い視野で、パンを焼いたり、ワインを注いだりとアシストする。そう言えば、イニエスタもワイン好きらしい。

 「チーズには自信あるのよ。うち」。ロックフォールという羊の乳で作るブルーチーズを出してくれた。鼻を近づけなくても香ばしいにおいが届く。「これが一番、ワインに合うんだから。浜松で置いているのはうちくらいよ」。ロックだかフォークだかよく分からないが、舌の上でまろやかにチーズが溶けてゆく。確かにワインが欲しくなる味だ。

 ジョセフィーヌと言えば、ナポレオンの妻。「フランスが好きだから。英雄の悪妻の名にあやかろうかと。それに、インパクトがある名前じゃない」。店名の由来を聞いてみたら結構、単純だった。

 この店のジョセフィーヌは、セントヘレナ島に島流しにされたナポレオン、じゃなくてバブル景気を懐かしんでいる。

 「昔は景気が良かったのよ。店を開けたらすぐに満席になったんだから。上司も部下も取引先も関係なく、みんな楽しく飲んでいたわね。今は出張費も交際費も出ないものね」。確かに、今や浜松産の飲んべえは、天然ウナギ並みに貴重だろう。

 ナポレオンは「我が輩の辞書に、不可能の文字はない」と言ったとか言ってないとか。そこまで自信があれば立派なものである。ちなみに、我が輩の辞書には「交際費」の文字はない。理由は言わない。

 【今回の出費 三人で約九千円】

(鎌倉優太)

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