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静岡連載

浜松夜話 第10話 音楽の秋「港場ライブ」

演奏する常連客の男性=浜松市中区田町のバー「ハーバー」で

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 「音楽の秋」にぴったりな店がある。浜松市中区田町の通称・ゆりの木通り沿いにあるバー「ハーバー(Harbor)」。九月末の午後八時半ごろ、紹介してくれたHさんと連れ立って入店すると、アップライトピアノを八十代の男性客が軽やかに弾いていた。マスターの青山睦さん(57)によると、この即興ピアニストは、いつも「ふらっと現れてふらっと弾いて帰る」らしい。私には音楽の素養がないからこそ思うのだが、楽器が弾ける人って、カッコイイ。

 セピア色に照らされた店内は一部にれんが調の壁が施されており、落ち着いた雰囲気だ。ビリー・ジョエルの「This Night」に曲が切り替わる。耳を傾けながら、ウイスキーのグラスを傾ける。私のは「かっこつけ」。自分でも、分かっている。

 席に座って十分ほど。演奏曲が島谷ひとみの「亜麻色の髪の乙女」に切り替わった頃、私の隣には「白色の髪のおじさん(五十代)」が座ってきた。

 「君、新聞記者? ライターなの? まさか、頭から火を噴くんじゃないんだろうね」。既に出来上がっている。

 青山さんがおつまみに、ホオズキを出してくれた。初めて食べる果物だ。「トロピカルな味がしますね」。私がつい口をつくと、白髪のおじさんが返した。「いやあ、新聞記者はやっぱり、表現力が違うねえ。『トロピカル』だって。すごいなあ」。褒められていないのは、酔っていても分かる。恥ずかしいから、やめてくれ。

 さらに二十分ほど経過。ジャズボーカルの愛好家の男女が仲良く入店してきた。女性が男性に「ねえ歌いましょうよ」と声を掛けた。いきなり、即興のジャズライブが始まった。店内は一気ににぎやかになる。この店は、こんな夜が何度も繰り返されてきたのだ。

 オープンしたのは一九九二年十月。店名には「ハーバー(港)」のように、集い場となるよう願いを込めた。「開店当初に来ていた女の子が子育てを終えて、また店に来るようになっちゃったよ」と青山さんは笑う。確かに、船は港に戻ってくるものだ。

 【今回の出費 二人で四千円】

(鎌倉優太)

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