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静岡連載

浜松夜話 第1話 街で唯一のカクテル

ミクソロジーカクテルを提供する鎌田さん=浜松市中区の「オーガニックダイニングバー・オルガ」で

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 二月半ば、平日の午後十一時。夜の待ち合わせによく使われるコンビニ近く。客引きのお兄さんの声には耳を貸さず、「オーガニックダイニングバー・オルガ」のドアを開ける。

 カウンターの向こうには、役所広司のように長髪をなびかせ、口ひげを蓄えた店長の鎌田さん(51)。ワイルドな風貌だが口調は穏やか。一見、五十代には見えず、年齢詐称ではないかと疑っている。

 もう一人は「将来は美魔女になりたい」という看板娘のまおちゃん(25)。よく常連客から求愛されるが、大抵はのれんに腕押し。客も注文もよくさばく。

 赤が基調の店内におしゃれなインテリアが並ぶ。珍しいウイスキーもある。でも店の最大の売りは新鮮なフルーツや野菜を組み合わせた「ミクソロジーカクテル」。なんだそりゃ。記者たる者、カタカナはあんまり使うなと先輩記者に言われたんだ。「東京とかでは普通にやってますよ」。鎌田さんは流行に敏感だ。

 実はこの店、二回目の取材。軟弱なカクテルなんて飲めるか、とウイスキーばかり飲んで一回、原稿を記したのだが、ヒゲ上司に「最大の売りを飲んでないのか」とダメ出しされた。

 早速「みくそろじーかくてる」を注文する。鎌田さんがイチゴとバジルを手際良く刻み、ウオッカやライムジュースなどと一緒にミキサーにかける。出来上がったオレンジ色の液体を口に運ぶと、イチゴの甘さの後にさわやかな香りが押し寄せる。「うん、おいしい」。記者とは思えぬ語彙(ごい)力で感想を伝えるも、鎌田さんは「ありがとうございます」と相変わらず穏やか。

 東京で大学生をしていた鎌田さんは、バーでアルバイトをしていたのがきっかけでこの道に。「他にできることもない。私の父親、酒飲めない銀行員なんで『けしからん』って反応、されましたけどね」

 市内のバーで十三年チーフバーテンダーを務めたあと、二〇一〇年三月にこの店を開く。「誰もやっていないことがやりたい」。いわく、浜松でミクソロジーカクテルを提供するのはこの店だけ。

 四月には現在の店の隣にたこ焼きとサワーをメインメニューに据えた店を開くという。それぞれ全く違うものを掛け合わせたらどうなるのか。雪見だいふくみたいなもんだろうか。その方程式の解は全くの謎だが、これも浜松初の試みになるのだろう。気になる人は行ってみるといい。私の名前を出しても特には割引にはならない。

 「でも、新しい店開くから、お金がいくらあっても足りないですよ」。マスター、俺も金ないよ。名字にお互い、「金」はついてるけどね。【今回の出費(二回の合計)5990円】

(鎌倉優太)

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